研究実績の概要 |
本研究では、エストロゲン関連受容体α(ERRα)が子宮体癌において癌-間質相互作用と浸潤・転移作用に及ぼす影響について明らかにすることを目的として以下の実験を行った。①ERRαを強発現または発現を抑制させた子宮体癌細胞株Ishikawa細胞と子宮内膜間質細胞株を共培養し、間質細胞側の炎症性サイトカインの発現や体癌細胞側の上皮間葉転換(EMT)関連因子の発現についてリアルタイムPCR法を用いて調べた。②さらに癌細胞の運動能の変化についてwound healing assayを用いて調べた。③倫理委員会の承認と患者の同意を得て、子宮体癌組織から間質細胞(CAFs)を分離培養した。子宮体癌細胞株Ishikawa細胞とCAFsを共培養し、体癌細胞側のERRα発現とEMT関連因子の発現の関連を調べた。その結果、体癌細胞のERRα発現が共培養により間質細胞のTGF-β, TNF-α, IL-6, IL-8の発現を上げ、さらに体癌細胞のSnail, ZEB1, Vimentinの発現を上げた。ERRαの発現を抑制すると間質細胞の炎症性サイトカインの発現は変化せず、体癌細胞のEMT関連因子の発現は低下した。また、ERRα発現や共培養によって癌細胞の運動能も上昇した。臨床検体のCAFsとの共培養によっても同様に、ERRα発現がEMT関連因子の発現を上げた。以上より、ERRα発現は癌-間質相互作用を介して間質細胞の炎症性サイトカインの発現を上げ、癌細胞のEMT関連因子や運動能を誘導することが示唆された。今後は、CAFsの起源とされる間葉系幹細胞(MSCs)の培養法を確立し、ERRαが腫瘍微小環境に対して及ぼす影響について評価する。
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