食道基底細胞に発現するグルタチオンS-転移酵素ω2 (GSTO2)が、腺癌の発生母地として知られる食道-胃接合部粘膜腺細胞の一部にも限局して発現することを、ヒト組織染色において見出した。外科的切除検体89例の免疫組織学的検討では、GSTO2陽性率は腺癌で高く(48%)、扁平上皮癌で低かった(21%)。GSTO2を遺伝子導入したヒト食道扁平上皮癌細胞株では、細胞増殖およびE-カドヘリンの膜局在が抑制されたが、腺癌細胞株では抑制されなかった。DNAメチル化阻害剤処理により扁平上皮癌細胞株のGSTO2発現が回復した。以上より、GSTO2の分子機能および制御機構は腺上皮と扁平上皮で異なると考えられた。
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