研究実績の概要 |
本研究は唾液腺再生における転写因子p63の発現を解析し、再生医療へ応用することを目的とした。まず[step 1]として損傷唾液腺の再生過程におけるp63の発現を確認した。実験には8週齢のICR雌マウスを用い、右側耳下腺を対象とした。耳下腺の損傷方法として、排泄主導管を結紮・開放することによる導管結紮と、耳下腺領域の放射線照射を用いた。 導管結紮は7日後に開放し、結紮1,3日後、開放0,7,14日後の耳下腺におけるp63の発現を免疫組織染色にて解析した。結紮1日後ではp63陽性細胞数に変化は見られなかったが、結紮3日後は増加し、組織の損傷が最大である結紮7日後(開放0日後)には最も増加していた。結紮開放後は組織の回復に伴ってp63陽性細胞数が徐々に減少し、開放14日後では正常唾液腺と同程度であった。開放0日後におけるp63のアイソフォームをqPCRで解析したところ、ΔNp63の発現が増加し、TAp63は減少していた。唾液腺の幹細胞マーカーであるKeratin5の発現を免疫組織染色にて確認したところ、開放0日後において最も増加しており、ほぼ全てのp63陽性細胞と共発現していた。また、筋上皮細胞のマーカーであるαSMAの発現を確認したところ、p63/Keratin5両陽性の細胞と多くが共発現していた。 放射線照射は9Gyを耳下腺領域のみに照射し、照射1,3,7,14,28日後の耳下腺におけるp63の発現を導管結紮と同様に解析した。照射1,3日後ではp63陽性細胞数に変化は見られなかったが、組織の損傷が最大である照射7日後に最も増加した。その後は組織の回復傾向に従い減少した。照射7日後にはΔNp63が増加し、TAp63に変化は見られなかった。また、Keratin5はほぼ全てのp63陽性細胞と共発現し、αSMAの多くがp63/Keratin5両陽性の細胞と共発現していた。
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