研究実績の概要 |
エクソソームはより簡便で低侵襲なリキッドバイオプシーのリソースに用いるバイオマーカーとして注目されている. 一般的に口腔扁平上皮癌(OSCC)では, 血中SCCが腫瘍マーカーとして用いられているが, その感度は決して高くない. より有用な腫瘍マーカーの開発が期待されている. 本研究では, 転移性の異なるOSCC細胞株から精製したエクソソームの網羅的発現解析と細胞実験により, 腫瘍進展/転移に関わるマーカーとなりうるタンパク質の同定を目指している. さらに, 同定したエクソソームマーカー分子の生物学的機能を評価し, OSCC進展における悪性形質獲得までの分子機構の一端を解明する. また, 臨床的有用性の検討を行うために, OSCC患者の臨床検体サンプルからエクソソームを精製することを試み, 健常者との差異を見出すことで, 画期的なバイオマーカーの開発に貢献することを目指す. これまでの研究において, 2種類の転移性の異なるOSCC細胞株から精製したエクソソームのプロテオーム解析を行い, 高転移性OSCC細胞由来のエクソソームで発現が増加しているタンパク質群として分子シャペロンタンパク質を見出した. 中でも, HSP90α/βがより高転移性OSCC細胞由来エクソソームにおいて有意に高検出であった. 前年度は, そのエクソソーム内HSP90がOSCC進展に影響する可能性をより強固なものとするため, RNAi法を応用することで, HSP90欠失エクソソームの精製技術を確立した. 更に, エクソソーム内HSP90の機能評価のため, 培養細胞を用いたエクソソーム取り込み実験により, エクソソーム内のHSP90が様々な悪性形質獲得の分子機構(上皮間葉転換の促進, マクロファージのM2分極など)に関わっていることが示唆された.
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