研究課題/領域番号 |
19K24073
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
濱本 結太 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (00848476)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | Porphyromonas gingivalis / 腸内細菌叢 / ACPA / 糞便移植 |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)モデルマウスにPorphyromonas gingivalis(Pg)を感染させると、RA臨床症状が劇的に増悪することを突き止めた。そこでそのメカニズムの一つとして、腸管の免疫応答に着目して糞便のメタゲノム解析を行った結果、Pg感染による腸内細菌叢の変化が確認された。特に、Th17細胞の分化への関与が報告されているS24-7の増加と、Treg細胞の分化への関与が報告されているClostridialeの減少が確認された。更に大腸、小腸ともに腸組織中のIL-6が増加した。これらのことから、Pg口腔感染により腸内細菌叢が変化した結果、腸内の炎症性変化が起きている可能性が示唆された。 一方、このように腸内の細菌叢異常と炎症性変化を示したPg感染RAモデルマウスにおいて、RA臨床診断マーカーであるanti-cyclic citrullinated peptide antibody(ACPA)が結合するシトルリン化蛋白(CP)の異常増加が引き起こされていた。このことは、Pg口腔感染が腸内におけるシトルリン化の活性化を引き起こし、ACPA産生の原因となる環境因子である可能性が示された。 更に、変化した腸内細菌がRAマウスの増悪に影響するのかを詳細に検討するために、通常のRA臨床発症マウスとPg感染RAマウスから、レシピエントマウスに糞便移植を行った。その結果、Pg感染RAマウスの糞便移植では、レシピエントマウスにPgを直接感染させることなく変化した腸内細菌叢を再現した。同マウスではRA臨床症状の増悪、CPの増加が早期から認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究予定期間のうち1年目が終了したが、Pg口腔感染RAモデルマウスの腸内細菌のdysbiosisを確認し、研究の基盤を作った。特にTh細胞、Treg細胞分化に関わる細菌の増減を確認し、T細胞を中心とした免疫応答が、RA増悪に関連している可能性を示唆した。更に、糞便移植を行うことにより、変化した腸内細菌叢を再現し、dysbiosisによるRA増悪に対する強い関連を示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
Pg感染RAモデルマウスにおいて、腸内のCPが増加したことから、PgPADによるタンパク質のシトルリン化の影響を検討する。具体的にはワイルドタイプPgとPgPADノックアウトPgをRAモデルマウスに感染させ、RAの臨床所見の程度、産生されるCPとACPA量、炎症性サイトカインなどの評価、比較を行う。 また、腸管上皮側の免疫応答に着目し、T細胞や粘膜上皮表面のフコースの動態について詳しく分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験を予定していたが、当初予定していた結果が、長期飼育ではなく短期間で得られたために、追加の動物実験が必要なくなったため、次年度使用額が生じた。得られたデータをもとに、令和2年度予算と合わせて、PgPADに着目した追加の動物実験に使用する。
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