破骨細胞の成熟における細胞融合に関与するGPCR familyの膜受容体として、Osteoclast stimulatory transmembrane protein(OC-stamp)があり、我々は最近、このOC-stamp KOマウスのフェノタイプを解析した結果、通常では大理石骨病などの骨病変を示さないが、歯周病を誘導すると歯槽骨骨吸収に抵抗性を示すことを発見した。これはつまり、OC-stampを抑制すれば、一律に破骨細胞を抑制するのではなく、病的な破骨細胞誘導のみを抑制しえる可能性を示唆している。そのため、OC-stampを特異的に抑制すれば、歯周病をはじめとする骨吸収性疾患に対して、顎骨壊死などの副作用を起こしにくい新規治療を提供できる可能性が考えられた。 そこで、本研究で標的細胞のOC-stamp発現を抑制するとともに、破骨細胞への分化抑制効果を検討した。その結果、OC-stampのsiRNAと導入用ナノゲルを用いて発現抑制を行った群では、TRAP染色やqRT-PCRにて破骨細胞分化を抑制しえることを確認した。 しかしながら、この研究手法では、OC-stampの発現抑制効率が期待したほどのものではなかったためか、破骨細胞分化抑制効果は限定的であった。そのため、まずはOC-stampの発現の十分な抑制を成し得るため、CRISPER-Cas9システムでのKOも試みた。しかしながら、OC-stampをtargetとしたCRISPER-Cas9 plasmid DNAを標的細胞に導入するも、良好な結果を得ることは出来なかった。 本研究期間中にOC-stamp発現を抑制することで、破骨細胞分化を抑制することが確認されたが、十分な成果を得るには今後さらなる検討が必要と考えられた。
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