医科歯科連携の重要性が高まる中、歯科医療が糖尿病の改善に貢献する可能性が報告されている。本研究は、糖尿病患者を対象として、埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会の運営する地域医療情報連携ネットワークシステム「とねっと」のデータベースを利用し、歯科受診の有無と血糖(血糖値、HbA1c)および腎機能に関連する検査値(eGFR (推定糸球体濾過量)、クレアチニン、尿アルブミン、尿蛋白クレアチニン補正値)の変化を、後ろ向きに評価した。2013年から2019年において、地域医療情報連携ネットワークシステム「とねっと」に登録している医療施設の1つである東埼玉総合病院の糖尿病外来を受診した患者のうち、観察期間が5年以上である者を解析対象とした。解析対象者は180名(男性93名、女性87名)、年齢は平均±標準偏差で63.9±10.7歳であった。観察期間中に歯科受診があった者は102名(56.7%)、なかった者は78名(43.3%)であった。 ベースライン時と最終検査時の各検査値の変化量を、歯科受診の有無について、対応のないt検定を使用して比較した結果、血糖値およびHbA1cでは違いを認めなかった一方、腎機能の評価に関わるeGFR (推定糸球体濾過量)においては、歯科受診のある者の方が低下量は少なかった(歯科受診有:-5.93±10.50、歯科受診無し:-13.36±15.47、p<0.001)。このメカニズムについては、本研究の結果からは明らかにすることは難しい。しかしながら糖尿病患者では、歯科受診の有無により腎機能に関連する検査値に違いが認められた。特に、eGFRで示される腎機能の低下を防ぐ可能性が示唆された。
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