研究課題
がん微小環境には、がん抑制的応答に関わる正の免疫と、がん促進的応答に関わる負の免疫が存在する。なかでも、ミエロイド由来抑制性細胞(MDSC)や腫瘍関連マクロファージ(TAM) や腫瘍関連好中球(TAN)などのミエロイド系細胞は腫瘍局所のみならず、その前駆体細胞が様々な臓器で増加・循環し、がん促進的応答に関連していることが示されている。先行研究からマウス扁平上皮癌SCCVII およびNR-S1 モデルは、同じC3H 系統由来にも関わらず、両癌に浸潤するミエロイド系細胞の種類は全く異なり、それぞれに効果的な免疫療法も違っていた。SCCVII モデルではTAM 様のマクロファージ系細胞が、NR-S1 モデルではTAN 様の顆粒球系細胞が、がん浸潤白血球中の半数近くを占めていた。の結果から2種類のミエロイド系細胞が癌微小環境に浸潤し全身に循環するタイムポイントを明らかにするため未発表結果ではあるが両細胞のリアルタイムPCR 結果から、SCCVII ではM-CSF 発現が高くマクロファージ系細胞に、NR-S1 ではG-CSF 発現が高く顆粒球系細胞に、それぞれの腫瘍から産生されるサイトカインが腫瘍微小環境のミエロイド前駆体細胞の成熟に関与していることを示唆するものであった。これは、腫瘍増大と、それぞれに主に集積するミエロイド系細胞が全身に循環する機序にも関連している。そこで、ルシフェラーゼを用いた発光イメージング技術を両細胞に応用し両マウスモデルの腫瘍の増大ならびに全身循環を観察し、全身に循環する(転移を示唆する)タイムポイントにおける表現型の解析を行うことで、病期ごとの標的化治療を考察するため、現在モデルの作成段階である。
2: おおむね順調に進展している
上記の3項目の目的に対して初年度としては概ね順調に進展している。特に1に関しては、既に最終報告結果が出ており結果が示されている。最終結果をもってPD-1免疫チェックポイント分子阻害療法に併用薬剤を追加し治療実験を予定したいが、候補となる標的分子が多く見つかり検討中である。
先述の通り、PD-1免疫チェックポイント分子阻害剤を用いた新規複合免疫療法に加え、既存の薬剤との併用効果についてを治療実験から有用性の有無について、ある程度判断できると予想している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件)
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