研究課題/領域番号 |
19K24089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松川 誠 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70845859)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ゼラチンハイドロゲル / 細胞増殖因子 / 徐放 / 注入 / 筋再生 |
研究実績の概要 |
本研究は組織内に注入可能な足場材の開発ならびに筋組織再生を目的とする。第一段階とし bFGF徐放型ゼラチンハイドロゲルを脂肪幹細胞とともにラット咬筋に移植し、移植した周囲の咬筋組織に及ぼす影響について評価を行った。 <方法>bFGF徐放型ゼラチンハイドロゲル溶液 250μlにPKH26にて標識された脂肪幹細胞5.0×103 を懸濁し、脂肪幹細胞を含んだbFGF徐放型ゼラチンハイドロゲル(①)を調整し た。 ラット咬筋へ①を移植後7、 28日後に咬筋を摘出し、HE染色および免疫組織化学染色、 蛍光免疫染色を行い、移植周辺組織の形態学的評価を行った。<結果> IG+P(G)と共に脂肪幹細胞を移植することで移植後7日において脂肪幹細胞は移植周辺組織に留まることが明らかとなり、IG+P(G)を足場とし、細胞増殖を認めることが明らかとなった。また移植後28日では同部位に筋組織の修復を認めた。 術後7日時点で移植幹細胞や徐放粒子周囲にCD31の発現を認め、 術後28日時点ではMyo-Dの発現を認めた。 <結語>薬剤徐放化ゼラチン粒子含有インジェクタブルゲルは、細胞増殖因子の長期的な供給と、幹細胞の歩留まりを向上させることで、 幹細胞の体内生存率を高め、移植治療効率の向上に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID‐19の流行による研究活動の制限のため
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今後の研究の推進方策 |
脂肪由来幹細胞は周囲組織へのパラクライン効果と多分化能および免疫寛容性を持ち、幹細胞の同種他家移植への応用が期待されている。薬剤徐放粒子とともに組織内に注入することで、幹細胞の機能と生存率が向上するが、損傷のない筋組織への幹細胞移植がどう影響するかは不明である。筋組織への幹細胞移植が、筋力をどの程度増強するのか、増強する場合、幹細胞の分化とパラクライン効果のどちらによるのかを検証する。 具体的には、GFPラットを用いて全身麻酔下にて鼠径部皮下脂肪組織を採取、脂肪由来幹細胞を単離する。細胞増殖因子を含んだ徐放粒子を分散させたPBS溶液を用いて、3継代目の脂肪由来幹細胞を懸濁し、これを組織内に注入する溶液として用い、SD系ラットのヒラメ筋に移植を行う。注入後1週よりトレッドミル装置によって3日ごとに筋負荷(25m/min,1hr)を2か月間与え、幹細胞の有無が、筋負荷の筋力向上に与える影響を検証する。評価方法は、腓骨神経刺激時の筋電図の測定、筋収縮力の測定によって、筋組織に対する機能評価を行い、HE染色や蛍光免疫染色を利用した組織学的検討、筋組織から採取したDNA、mRNAを用いたRT-PCRによる検討を行うことで、筋力増強の原因が、幹細胞の筋組織へ分化によるのか、周囲の筋芽細胞へのパラクライン効果によるものかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症に伴い研究活動の制限が生じ、研究の進展が遅延している。その他参加予定していた学会の開催中止やWEB開催への変更となり旅費や参加費が不要となったため、 出費自体が少額となった。 また当初は本年度中にイヌを用いた研究を予定していたが、コロナ流行に伴う麻酔薬の制限などにより対象をラットへ変更したため、動物飼育費が抑えられたためと考えられる。今後は現時点で得られた知見を用いてイヌを用いた鼻咽腔閉鎖機能の向上についての検討を行う予定であり、他実験遂行に必要なゼラチンハイドロゲル作製・ 脂肪幹細胞精製・ 組織染色・ 外科処置に伴う費用に予算を充てる予定である。 また、成果発表のための学会参加費・論文投稿費としての使用も予定している。
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