研究課題/領域番号 |
19K24092
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 沙優里 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (20848246)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔内環境 / コホート研究 / オーラルフレイル / 睡眠の質 |
研究実績の概要 |
口腔領域は咀嚼、嚥下、発音など日常生活において必要不可欠な機能を担い、QOL (Quality of Life)の維持向上の為に重要な役割を果たす。これまでの横断的な研究等から口腔周囲環境と栄養状態や睡眠の質との関連を探索する研究は多く行われており、一定の成果を上げている。近年、口腔機能の発達が未熟な小児において見られるオーラルフレイルが口腔機能発達不全症として保険収載され、口腔内環境と全身状態、精神発育への関連が注目されている。本研究は、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)と協力し、顎顔面形態や口腔機能が全身状態にどの様な影響を与えるかを解明する事を目的とする。更に、当科に通院している患者に同様の調査を行う事で、矯正治療等の歯科的介入により全身症状の改善が可能かについて明らかにする事を目的とする。具体的には、エコチル参加者の歯科検診票と現在まで得られている問診票の項目を照らし合わせ、8歳児の齲蝕や歯肉炎と関連が疑われる生活習慣を同定する。またエコチル調査に、不正咬合の有無、軟組織の形態的計測、口唇閉鎖筋の評価、咬合力の測定、発音機能の評価の追加調査を行う。これらのデータを集める事で、8歳時における顎顔面の形態的な標準値や咀嚼(咬合力)・嚥下(口唇閉鎖力)・発音(発音回数)における数値の標準値の作製が可能となる。更に、睡眠の質に関する質問票を用いて参加者の睡眠時間のみならず睡眠時無呼吸症候群の有無や睡眠の質も評価する。これらにより臨床経験から推察されていたが詳細が明らかとなっていない全身状態に対するリスク候補因子を多数評価する事が可能である。以上の検査は複数回行い、顎顔面形態や咬合状態が時系列に沿ってどの様に変化していくのか、またその変化に影響する生活環境因子にはどの様な物があるかを評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は8歳児のエコチル参加者の歯科検診票と現在まで得られている問診票の項目を照らし合わせ、8歳児の齲蝕や歯肉炎と関連が疑われる生活習慣を検討した。また、エコチル調査に追加調査からデータを集める事で、8歳時における顎顔面の形態的な標準値や咀嚼(咬合力)・嚥下(口唇閉鎖力)・発音(発音回数)における数値の標準値の作製が可能となった。睡眠の質に関する質問票を用いて参加者の睡眠時無呼吸症候群の有無や睡眠の質も評価した。さらに8歳時における顎顔面形態や口腔機能が全身状態に与える影響について解析を進めている。以上の検査は複数回行い、顎顔面形態や咬合状態の変化や、またその変化に影響する生活環境因子の検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度夏の追加調査は新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い中止となった。今後、9歳児のエコチル参加者に追加調査を行う。さらにエコチル調査とは別に全身状態に対する不正咬合や歯科矯正治療の影響を探索する。具体的には、大阪大学歯学部附属病院矯正科に通院中である同年齢の不正咬合を持つ患者に対して上記と同じ問診事項、検査項目を取得し、様々な不正咬合がある事や歯科矯正治療を施術する事により、睡眠や全身状態にどの様な影響があるかを詳細に調査する事を目的とする。申請者の所属する大阪大学歯学部附属病院矯正科には顎顔面形成不全を伴う多様な小児の不正咬合患者が数多く集まる。またエコチル調査は小児期の資料を網羅的に取得するには適した集団である。当科に通院する患者から得られたデータとエコチル調査の歯科検診のデータ等を比較解析する事により齲蝕や歯肉炎のリスク因子と歯牙損失のオッズ比等を解明する事が可能なのは勿論の事、臨床経験から推察されていたが詳細が明らかとなっていない全身疾患に対する顎顔面形成不全や口腔機能不全等の多くのリスク候補因子を多数評価する事が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度のエコチル調査における追加調査に使用する消耗品の費用に充てるためである。さらに、学会での発表に係る印刷費、交通費や通信費を確保するためである。
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