研究課題/領域番号 |
19K24096
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉田 和真 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (60846856)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 炎症制御 / 硬組織 / 歯内療法 / 再生療法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヘパリン・LL37 複合体が細胞機能調節能を有する歯内疾患治療薬のシーズ候補であるかを検討し,歯内疾患治療薬としての有用性を評価することである。 Cathelicidin family に属する抗菌ペプチド LL37 は,抗菌活性に加えて,リポ多糖 (LPS) 中和能および血管新生,骨形成作用といった細胞機能調節能を有するが,LL37 がもつ細胞障害性が臨床応用を困難にしている。申請者は,LL37 をヘパリンと複合させ,ヘパリン・LL37 複合体として作用させることによって,抗菌活性や LPS 中和能を保持しつつ,細胞障害性を低減できることを報告している。 マウスを用いた in vivo 実験系で歯内治療への役割を検討する前に,in vitro 実験系でのヘパリン・LL37 複合体の作用について検討を行った。 当研究室で単離した歯髄細胞に対して LL37 およびヘパリン・LL37 複合体を作用させ,ALP assay や各種骨分化マーカーをPCR 法を用いて検討を行ったが, 骨形成を促進する作用は見られなかった。骨形成作用を詳細に検討するために,骨芽細胞様細胞をヘパリン・LL37 複合体で刺激した際の骨分化マーカーを調べた結果,オステオカルシン発現の上昇が見られ,ヘパリン・LL37 複合体による骨分化マーカー遺伝子の発現促進が確認出来た。今後,他の骨分化マーカに関しても検討を行う必要がある。 ヘパリン・LL37 複合体の歯髄細胞に対する創傷治癒作用を検討するために,scratch wound healing assay を行ったが,歯髄細胞に対して遊走能の促進は見られなかった。今後,他の創傷治癒モデルを用いて,引き続き検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LL37 が歯髄細胞に対して持っているとされる細胞機能調節能の再現実験が出来ておらず,今年度は実績報告が出来なかったが,代替の細胞でヘパリン・LL37 複合体の機能を一部解明することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きヘパリン・LL37 複合体が歯内療法治療薬のシーズ候補であるか検討を行う。ヘパリン・LL37複合体の骨分化マーカー遺伝子の発現上昇の分子メカニズム解明について,LL37 との差異を明らかにする研究を実施する予定である。創傷治癒モデルも含め,LL37 がもつとされる細胞機能調節機構を,ヘパリン・LL37 複合体が有しているかどうかを確認する。さらにマウスモデルを用い,ヘパリン・LL37 複合体の歯内治療への役割を in vivo で検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
歯髄細胞を用いて行う予定であった実験が計画通りに進まず,抗体等の比較的高額な消耗品の購入が遅れているため。他の実験系を用いて,ヘパリン・LL37 複合体の歯内療法における細胞機能調節能を明らかにするために今年度使用できなかった予算分を使用する。
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