研究課題/領域番号 |
19K24102
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
山崎 亮太 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (70841998)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | Persister / 口腔病原細菌 / 抗生物質 / 歯周病 / 齲蝕 / 殺菌 / 再発予防 |
研究実績の概要 |
本申請研究は、「歯周病の発症や再発を“Persister”の視点から防ぐ」ことをキーワードとして研究を行っている。細菌はPersisterという外部ストレスに対する抵抗性の高い状態に移行することで、薬剤や飢餓など様々な環境で生存する。外部ストレスが緩和されると再び増殖を始めるため、病原細菌においてはこれが、治療が完治しないまたは再発の原因とされている。口腔病原細菌も同様にPersister化が原因で歯周病などの完治を困難化していると考えられる。よって口腔病原細菌が形成するPersisterに着目し、発生率やメカニズム、更にはPersisterの除去法を確立することで、歯科臨床上の問題解決に繋げることが目的である。 初年度では、人工的なPersisterの誘導法が確立している大腸菌を用い、Persisterを通常のアクティブな状態に移行させる方法とその遺伝子メカニズム解明に着手した。結果として、Persisterは必要な栄養(特にアラニンとグルコース)を近くに感知すると活動を再開し、そこに目掛けて動くことを初めて明らかにした。これは非常に重要な知見であり、この方法でPersisterを強制的に通常状態に移行させることがきる。通常のアクティブな状態であれば、抗生物質などの感受性が増すため、容易に殺菌除去することが可能となる。これらの成果は学術論文としてCellグループの新雑誌であるiScienceに掲載されている(Yamasaki, et al., iScience, 23(1), 100792, (2020))。その後は、口腔病原細菌のPersisterの研究を進めている。種々の口腔病原細菌に対し、様々な薬剤を投与することで、薬剤への感受性やPersisterの発生率を検証している。次年度は引き続き口腔病原細菌のPersisterに関する研究を進め成果を挙げていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌におけるPersisterの研究を進め、通常のアクティブな状態に強制的に移行する方法の発見や、その移行に関わる重要な遺伝子(タンパク質)メカニズムを明らかにした。こうした本申請研究に関わる研究をまとめ、学術論文として公表するに至った。また、これらの知見を口腔病原細菌に応用した研究を進めており、いくつかの重要な結果が得られている。こうした現状から、本申請研究はおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要でも一部述べたように、これまでの自身のPersisterに関する研究や他の研究報告などのあらゆる知見を口腔病原細菌に応用することで、口腔病原細菌Persisterに関する研究を推進していく。現時点で、限局性侵襲性歯周炎に関わるとされるAggregatibacter actinomycetemcomitansや齲蝕の原因とされているStreptococcus mutansなどの主要な病原細菌をターゲットに研究を行っている。これらの口腔病原細菌が形成するPersisterの発生率やメカニズムを解明して、学術論文としてまとめていく予定ある。また、その後は、より臨床的な研究に寄せるために複合細菌による実験や、口腔内の環境に近づけた条件などを検討していく予定である。本申請研究では人患者サンプルを使うための倫理申請を行っていないため、これに関しては以降の研究費申請時に組み込んで研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究成果をまとめた学術論文を投稿中であるが、その掲載料として必要な金額を2019年度予算として確保していた。しかし、この投稿中の論文に対し雑誌社が新型コロナウイルスなどの影響でその対応に大幅な遅延が生じるという見解を示したため、2019年度中に出す予定であった論文が2020年度に持ち越されることとなった。そのため、この確保していた当該予算が翌年分として繰り越されることになった。この当該予算は引き続き、論文受理後の掲載料として使用する予定である。
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