研究課題/領域番号 |
19K24106
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
原 基 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 助教 (90845281)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 歯髄細胞 / 間葉系幹細胞 / 肝細胞 / 歯の細胞バンク / 再生医療 / 劇症肝炎 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)は多くの細胞系統に分化し有力な再生医療の細胞資源である。歯髄から得られる幹細胞は骨髄由来の幹細胞と同等の増殖力と分化能を有している。更に幼児期の自然脱落歯や抜去智歯から得られるため、費用や侵襲性の少なさにおいて特に優れた細胞資源である。実際、申請者の所属する日本歯科大学では2015年より歯髄細胞バンクがスタートしており、再生医療の実現に向けた基礎的研究が開始されている。本研究の目的は、歯髄間葉系幹細胞から分化させた肝形質を有する細胞が、将来疾患に罹患した時に用いるテーラーメイド細胞資源としての有用性の確立に向けた基礎研究を行うことである。 具体的には抜去歯から歯髄組織を分離し、細胞培養とした。First StepとしてActivin AとFGF、Second StepとしてHGF培地に加えると紡錘形の間葉系幹細胞は多角形の肝細胞の形態に類似した細胞に分化した(Hepatocyte-like cell:HLC)。この細胞はアルブミンを産生し、アンモニアを尿素に転換することが示されたため成熟肝細胞の機能を有すると考えられた。また肝細胞特異的転写因子HNF-4の発現を認めたことより、歯髄細胞から肝細胞への分化の道筋を作ることができたと考えている。次にラットにConAとD-galactosideを投与して重症な肝障害を引き起こし、尾静脈からHLCを投与して肝障害の程度をコントロール群と比較して検討した。結果、ALT/AST、T.Bilなど肝障害の程度が抑制されたことより、肝移植でしか救命できない劇症肝炎への臨床応用をめざす研究の第一歩が踏めたと考えている(Journal of Hard Tissue Biology, Revise中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際にこれらの細胞がどれくらい肝炎による障害肝にhomingし、組織修復に関与するのかを明らかにする必要がある。そこで更に我々はHLCがどれ位ヌードラットの肝動脈にCr51でラベルしたHLCを肝動脈から動注して(ネモトサイエンス:白井博士との共同研究)Autoradiogramにて活性を投射する実験を行った。結果、歯髄MSC由来肝細胞シグナルが最低7日間に渡って肝に検出されることがわかった。しかしながら、この実験は極めて煩雑であるため、ヒトDNAをラットDNAから判別するPCRのプライマー配列を用いたヒトDNA特異的PCRの方法を確立した。それによって、ヌードラットの門脈に移入されたHLCの生存期間を検討した。結果正常ラット門脈内に投与した歯髄MSC由来肝細胞のラット肝内の量は、移入3時間で約1/100に減少することが分かった。しかしこれはあくまで正常肝に対する生着効果の検討であるため今後障害肝におけるHLCの生存Homing期間を検討し肝再生への関与を明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように我々はラットモデルにおいてConAとD-galactosideを同時に投与することによる重症な肝障害モデルを作成している。このモデルに尾静脈からHLCを投与すると、コントロールに比して肝障害の程度が改善することを見出している。今後、HLCの劇症肝炎への臨床応用を見据えて、どのような機序で肝障害が改善したのかを明確にしたいと考えている。間葉系幹細胞の病態改善効果の機序は2つあると考えられている。一つは移入された幹細胞が障害部位に生着、増殖し正常臓器再生のエンジンとして働くというもの。もう一つは、細胞が何らかの因子を産生にて、免疫抑制効果や細胞増殖効果を発揮するというものである(Paracrine効果)。特に、マクロファージの作用極性を変化させ、炎症抑制効果を発揮するなどの機序が注目されている。今後我々は現在進行している実験によってHLCの障害肝臓への生着率やTime Courseを明らかにしてMSCの障害部位への生着効果を明らかにするが、同時に炎症抑制効果に着眼点を向けて研究を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目において動物実験手技の不慣れな点等があり、処理することのできるラットのn数が若干少なくなったことにより次年度使用額が生じた。 今年度は実験手技も向上し、円滑に実験を行えるようになった。従ってラットのn数も増加させて、実験試薬や動物などの費用に上記金額を使用する計画である。
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