研究課題/領域番号 |
19K24109
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
伊藤 愛子 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (70846401)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 咬合不調和 / 心機能 / ストレス |
研究実績の概要 |
咬合不調和は交感神経活性を増加させ、心機能障害を誘導することが示唆されている。一方、レニンアンジオテン系(RAS)阻害剤カプトプリル(Cpt)は、心不全の有用な治療薬として広く臨床で用いられている。そこで歯科用樹脂を下顎切歯に装着する方法(Bite-opening;BO)で作製した咬合不調和マウスに観察される心不全発症にRASの活性化が重要であるという仮説を立て、その検証を試みた。 C57BL/6雄性マウスを、1)コントロール群、2)BO群、3)Cpt群(0.1g / L)、4)Cpt + BO群の4群に分けた。 BO装着が、体重、心機能(心臓超音波)、心肥大(心重量/脛骨比)、ストレスマーカー(血中コルチコステロン値)に及ぼす影響をBO装着2週後に調べた。その結果、体重に関してはBOおよびBO + Cpt群の両群とも徐々に減少し、BO装着5日以内に最大値に達した。その後、両群とも食事摂取量の増加とともに体重は回復したが、BO装着前のレベルには到達しなかった。なお心肥大(心筋重量/脛骨比 [mg/mm])に関しては4群間で有意差が観察されなかった。心機能(左室駆出率 [LVEF]、左室短縮率 [%FS])に関しては、BO群では心機能低下が観察されたが、Cptの併用投与を行ったBO+Cpt群では観察されなかった。血中コルチコステロン値に関しては、BO群とBO+Cpt群とも上昇したがその程度に有意差は観察されなかった。以上の結果より、咬合不調和によるストレスに起因する心不全発症にRASの活性化がきわめて重要な役割をはたしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り作製したモデルマウスを用いて、咬合の不調和が心機能に及ぼす影響を解析し、その研究成果を関連学会(第62回歯科基礎医学会学術大会、第9回国際矯正歯科会議世界大会)にて発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度と同様に不正咬合モデルマウスを用い、咬合の不調和によるストレスが、心機能に影響するメカニズムの詳細を解析予定である。また、HE染色にて咬筋、心筋の筋線維断面積の計測、マッソントリクローム染色にて線維化の割合の計測、TUNEL染色にてアポトーシスの割合の計測を行う。得られた研究成果は、関連学会における発表と学術雑誌への論文投稿を通して発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由は、今年度に計画していた研究の進捗状況からテレメトリーシステムの送信再生委託を行う必要がなくなったことである。次年度は、マッソントリクローム染色、TUNEL染色の試薬、抗8OHdG抗体等の免疫組織染色用の試薬の購入費として使用する予定である。
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