研究課題/領域番号 |
19K24114
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高 昇将 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00846082)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 繊維強化型レジン / CAD/CAM / 欠損補綴 / SiC |
研究実績の概要 |
CAD/CAMシステムに利用可能なロングスパンブリッジ用新規繊維強化型レジンの開発およびその臨床応用のために、SiC繊維の短繊維を用いた試作SiC短繊維強化型レジンを試作した。 ベースレジンはUDMAとTEGDMAを用い、それぞれ70:30 mass%の質量比で混合した。これに光増感剤としてカンファーキノン、重合促進剤としてN.N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを添加し、混合したものを光重合型ベースレジンとして用いた。SiC繊維とベースレジンを接着させるために、SiC繊維表面のサイジング剤を除去した後、1 mass%γ-MPTS含有の試作シランカップリング処理剤で前処理した。前処理後のSiC繊維をそれぞれ1mmおよび3mmの長さに切断し、短繊維としたものを繊維強化材としてベースレジンと混合した。混合物を試作SiC短繊維強化型レジンとして3点曲げ試験に供し、曲げ強さおよび曲げ弾性係数を測定した。試験片サイズおよび試験条件はISO4049:2009に準拠した。また、SEIにて曲げ試験後の試験片の破面観察を行った。 これらの結果から、SiC繊維の短繊維による補強効果は1mmよりも3mmのほうが優れていることが判明した。 また、光重合後の加熱がSiC短繊維強化型レジンの曲げ強さおよび弾性係数に及ぼす影響について検討した。これはSiC繊維が黒色であるため光が透過しきらず、光重合ではSiC短繊維強化型レジンが完全に重合していない可能性を考慮したためである。光重合後に100℃30分間加熱を行い、加熱前の試験片と加熱後の試験片それぞれを3点曲げ試験に供し、加熱による曲げ強さおよび曲げ弾性係数の変化を評価した。結果から、加熱によりSiC短繊維強化型レジンの曲げ強さおよび弾性係数が向上することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の長さのSiC短繊維を用意し、これを用いたSiC短繊維強化型レジンを試作した。これをISO4049:2009に準拠した試験片サイズ、試験条件にて3点曲げ試験に供することで曲げ強さおよび弾性係数の測定を行い、SiC短繊維を強化材として用いるための適切な繊維長を検討、決定した。また、決定した適切な繊維長に基づき、種々の繊維含有量のSiC短繊維強化型レジンを試作し、ISO4049:2009準拠した条件で3点曲げ試験を行った。これにより、繊維含有量がSiC短繊維強化型レジンの曲げ強さおよび弾性係数に及ぼす影響について検討し、適切な繊維含有量を決定した。これらの結果について今後国際学会での成果発表を予定している。 SiC短繊維強化型レジンに使用するためのSiC繊維の適切な繊維長および繊維含有量を決定できたため、研究は計画通りに進展している。 また、光重合だけでは試作SiC短繊維強化型レジンが完全に重合していない可能性があることから、光重合後の加熱が試作SiC短繊維強化型レジンに及ぼす影響について評価した。光重合後に100℃30分間大気中で加熱することで、曲げ強さおよび弾性係数が約2割上昇したため、光重合後の加熱が必要であることが判明した。これについても学会で成果発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
決定した適切な繊維長、繊維含有量のSiC繊維強化型レジンを試作し、これを加速度劣化試験に供することで、湿潤環境下での繰り返し温度変化による曲げ強さおよび弾性係数の変化について評価する。加速度劣化試験にはサーマルサイクル試験を用い、臨床応用にあたり必要な長期耐久性を検討する。サーマルサイクル試験では、5℃および60℃の蒸留水に試験片を交互に1分間ずつ浸漬する。浸漬する回数は0回をコントロールとして1000、5000、10000回とし、それぞれの回数浸漬した後、ISO4049:2009に準拠した曲げ試験に供する。3点曲げ試験の結果を元にSiC短繊維強化型レジンの長期的耐久性について評価する。 また、臨床応用を検討するにあたり、繊維の色調が問題となるため、歯科臨床で金属色遮蔽のために用いられているオペークレジンを色調改善のために使用することを検討している。オペークレジンを色調改善に用いるにあたり、必要最低限の厚みを検討する必要がある。理由として、オペークレジンの厚みを必要以上に増やすとオペークレジンの機械的強度の問題から、SiC短繊維強化型レジン全体の強度が落ちることが予想されるためである。 さらに、現在臨床で高強度レジンブリッジ用の材料として用いられているガラス繊維強化型コンポジットレジンを購入し、その曲げ強さおよび弾性係数を測定し、試作SiC繊維強化型レジンの値と比較することで試作SiC繊維強化型レジンが臨床応用に耐えうるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ベースレジンとSiC短繊維を均等に混和するため、アルジネート印象材用の自動練和器を購入予定であったが、機器の選定の遅れのにより購入が遅れている。また、研究に用いる機材の消費が想定していたよりも少なく、必要な金額が少額にとどまっている。以上のことから、現状は予定していた金額よりも少額の使用にとどまっている。自動練和器は使用予定があるため、機器の選定が済み次第予定である。研究に使用するベースレジンの残量が少なくなっており、追加で購入する必要があるため、今年度の残余金額は来年度使用予定である。また、研究成果の論文投稿を予定しているため、論文投稿費用、英文校正で使用予定がある。 新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた学会が誌上開催等の対応をしているため旅費が不要になっていることから、旅費として使用予定だった金額が残余となる可能性がある。
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