研究課題/領域番号 |
19K24115
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大川 純平 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10846041)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 咽頭残留 / 嚥下機能 / 嚥下障害 / レトロネーザル / ニオイセンサ |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた日本では、肺炎は死因の第3位を占め、その多くは誤嚥性肺炎である。しかし、誤嚥の原因となる咽頭残留を簡便かつ定量的に評価する方法は確立されておらず、多くは嚥下造影や嚥下内視鏡による定性的な評価にとどまっている。研究代表者は、食品から放出された香気が咽頭から鼻腔へと流れる経路(レトロネーザル)に着目し、咽頭残留を定量評価する試みを行っている。今まで、咽頭残留をシミュレートした健常者において、香気量から咽頭残留量を短時間で定量評価できる可能性を見出してきた。一方で、嚥下障害者での測定には至っておらず、さらなる精度の検証が必要である。本研究課題では、咽頭残留の定量評価法の確立を目指すとともに、さらに嚥下障害患者における咽頭残留の影響因子について検討することを目的とする。 装置は新コスモス電機社製ニオイセンサーXP-329IIIRを使用し,試料として三栄源エフエフアイ社製の香料を使用した。健常成人のおける液体嚥下時の咽頭残留をシミュレートするため、5mLの香料嚥下後に水0.4mLもしくは香料0.2mL、0.4mL、0.6mLを咽頭内に注入し、300秒間の香気量変化を鼻孔より経時的に測定した。 先行研究をもとに咽頭残留量と300秒後の香気量との関係を調査した。さらに、減衰曲線を用いた近似式を算出することで、香気量の経時的な変化を推定できることを確認した。そこで、高い精度でかつ短時間で咽頭残留量を推定できるよう、近似曲線の算出アルゴリズムの改善を行った。嚥下後80秒から120秒の間で導出した近似曲線を用いて算出した収束時の推定値と実測値との間には有意な相関を認めた。香気強度を測定することにより、短時間で咽頭残留量を推定できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、得られた咽頭残留量および香気量の測定結果をもとに、咽頭残留量を高い精度でかつ短時間で推定できるよう、近似曲線の算出アルゴリズムの改善を行った。はじめに、高い精度となる近似曲線が算出可能かを確認した。その結果、近似曲線と実際の香気変化との決定係数は平均0.94と高い値を示した。次に、高い精度となる近似曲線をもとに、短時間での近似曲線の算出を試みた。短時間の推定にあたり以下の3点を考慮した。 i) 近似する区間の開始点は早く設定するが、嚥下運動の影響を受けない安定している時間とする。ii) 近似式を得るための区間の長さが長いほど近似の精度は高くなる。iii) 体動や呼吸変化の影響を最小限にする時間とする。この3つの条件をもとに、すべての時間範囲を網羅的に探索し、嚥下後300秒後の香気量の推定および得られた推定値の検証を行った。その結果、80秒から120秒の40秒間が最も精度が高く近似できることを確認した。さらに、近似式による香気量の推定値が、咽頭残留量と有意に相関したことから、香気量を測定することにより、短時間で咽頭残留量を推定できる可能性が示唆された。 これらの研究結果を総括し、学会での結果報告および国際誌への論文投稿を行った。
課題はおおむね研究計画どおりにすすんでおり、得られた結果も想定通りのものであった。また、論文投稿を行い受理された。以上より、おおむね順調に進行しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果から、嚥下後咽頭残留シミュレーション時の香気量の動態と近似式の有用性を明らかとした。これらは,次年度の実験における条件データとなるものであった. 次年度は、食品物性や食品動態の影響も検討する予定である.さらに、嚥下障害者における測定を行う予定としており、嚥下機能との関連を検討する. また、研究結果を総括し,結果報告・論文執筆を行っていく予定としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通りに使用したが,残額分は次年度使用予定とした
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