研究課題/領域番号 |
19K24115
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大川 純平 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10846041)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 咽頭残留 / 嚥下機能 / 咀嚼機能 / レトロネーザル / ニオイセンサ |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた日本では、肺炎は死因の第3位を占め、その多くは誤嚥性肺炎である。しかし、誤嚥の原因となる咽頭残留を簡便かつ定量的に評価する方法は確立されておらず、多くは嚥下造影や嚥下内視鏡による定性的な評価にとどまっている。研究代表者は、食品から放出された香気が咽頭から鼻腔へと流れる経路(レトロネーザル)に着目し、咽頭残留を定量評価する試みを行っている。今まで、咽頭残留をシミュレートした健常者において、香気量から咽頭残留量を短時間で定量評価できる可能性を見出してきた。一方で、嚥下障害者での測定には至っておらず、さらなる精度の検証が必要である。本研究課題では、咽頭残留の定量評価法の確立を目指すとともに、さらに嚥下障害患者における咽頭残留の影響因子について検討することを目的とする。 前年度は液体嚥下時の香気強度の変化を測定し、咽頭残留量の推定方法を検討した。本年度は、食品物性や食品動態、摂取動態の影響も検討するため、固形食品を用いて咀嚼および嚥下時の香気強度の測定を行った。 装置は新コスモス電機社製ニオイセンサーXP-329IIIRを使用し,被検試料として咀嚼能力評価用グミゼリー(UHA味覚糖社製)を使用した。健常成人のおける咀嚼開始から咀嚼終了および嚥下後までの香気量変化を鼻孔より経時的に測定した。また、咀嚼後の固形食品の表面積を計測した。 咀嚼中は香気強度の上昇を認めたが、食品の表面積、咀嚼回数や咀嚼能力によって、その香気強度は変化した。さらに、嚥下後は、前年度の液体嚥下時と同様に、嚥下後は香気強度が減少に転じた。したがって、固形食品の食品動態、摂取動態によって香気強度が変化することが明らかとなった。また、嚥下後の香気強度を測定することで、咽頭残留量を推定できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、咀嚼および嚥下時における香気強度を測定することによって、食品摂取時においても、嚥下後咽頭残留の推定が可能かどうかの検討を行なった。また、咀嚼された食品の表面積を計測することで、食品動態の影響を検討した。 はじめに、咀嚼動態によって香気強度にどのような影響があるかを検討した。咀嚼回数や咀嚼能力によって、嚥下時の香気強度は変化することが明らかになった。また、嚥下時の食品の表面積によって香気強度が変化することが明らかになった。さらに、嚥下後には、液体嚥下時と同様に香気強度は減少に転じたことから、咽頭残留量を推定できる可能性を見出した。本研究結果を総括し、学会での結果報告および国際誌への論文投稿を行った。 一方で、新型コロナウイルスの影響で、追加実験を行うことが困難であった。食品摂取時の咽頭残留量との関連を調査できておらず、さらなる実験が必要である。
課題は研究計画よりやや遅れてすすんでいるが、本年度に得られた結果は想定通りのものであった。また、本年度の結果について論文投稿を行い、受理された。以上より、やや遅れて進捗しているものと考えられ、補助事業期間延長を申請し、承認された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究より、固形食品の咀嚼および嚥下時の香気強度の変化を測定し、それらは食品動態および咀嚼動体により影響を受けることを明らかにした。これらは、次年度の実験における条件データとなるものであった。 一方で、咽頭残留量との関連を調査できていないため、補助事業期間を延長した。次年度は健常者において咽頭残留をシミュレートし測定を行う予定である。また、嚥下障害者における測定を行うことで、嚥下機能との関連を検討する予定である。 また、研究結果を総括し、結果報告・論文執筆を行っていく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、実験を実施することが一部が困難となり残額が生じた。したがって、残額分は次年度使用予定とした。
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