研究課題/領域番号 |
19K24117
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関 壮樹 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60755081)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | ALS / 咀嚼障害 / 三叉神経 / SOD1G93A / ナトリウム電流 / パッチクランプ / AI |
研究実績の概要 |
筋委縮性側索硬化症 (ALS) は運動ニューロンの変性を伴った重篤な筋力低下を伴う難病であり、進行に伴って咀嚼・嚥下障害をきたし、最終的に経口摂取困難となり死に至る。 本研究者は咀嚼運動の制御に関わる三叉神経運動ニューロンのみならず、一次感覚ニューロンである三叉神経中脳路核ニューロン(MTN) においても発火異常があることを発見し、その原因がナトリウム電流の減少であることを明らかとした (Seki et al., J. Neurosci. 2019)。本研究では、①脳幹スライス標本を用いたMTNの電気生理学的実験と②モデル動物を用いた咀嚼行動観察実験により、ALSの咀嚼運動障害に対する新たな治療方法を考案する一助としていく。①において、ニューロペプチドY(NPY)は脳内に広く存在する摂食促進ペプチドであるが、MTNのナトリウム電流を促進、発火パターンが変化することを報告した(seki et al., J.Neuroscience Res. 2020)。②において、ALSモデルマウスの摂食行動観察をビデオ撮影し、野生型マウスの摂食行動との違いの検証を現在行っている。検討項目は 体重、摂食開始時間、30分間の摂食量、30分間の摂食時間、1回の咀嚼運動時間で、2人の研究者によって摂食行動の動画解析を行った。生後50日齢時、ALSモデルマウスと野生型マウスで計測項目に有意差を認めなかったが、生後100日齢時よりALSモデルマウスの体重は減少に転じ、30分当たりの摂食時間、咀嚼運動時の開閉口間隔は、野生型マウスと比較し有意に長くなっていた。摂食開始時間、30分間の摂食量には有意差を認めなかった。今後 NPYには、ALSのMTNで認められる発火異常を是正する効果があるのか、またNPYの投与により、ALSの咀嚼障害が改善するのか、電気生理学的実験と行動実験により検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALSモデルマウスである、SOD1G93Aマウスと野生型マウスの摂食行動を幼児期より継続的にビデオ撮影し、① 開始後30分までの累積摂食量(g)、② 飼料1gを与えた際の摂食開始までの時間(min)、③ 飼料2gを与えた際の接触の摂食時間(sec)、 ④飼料1gを与えた際の摂食率(mg/sec)、飼料1gを与えた際の摂食回数について比較検討を行っている。今後、撮影した動画を Deep learning による行動観察学習モデルを用いた、咀嚼障害鑑別AIを開発する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ALS進行期(100日齢~150日齢)のALSモデルマウスと野生型マウスの摂食行動の動画を研究者により解析、摂食行動の差異が認められる部分に注目し、動画を編集、 大容量の編集動画を Deep learning により差異を解析、咀嚼障害鑑別AIを開発する。開発した咀嚼障害鑑別AIをALS症状出現前(50日齢~100日齢)のALSモデルマウスと野生型マウスの摂食行動の動画に適応し、摂食行動との間に差異を認めるか確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、研究に関連する学会に参加できなかった。次年度に学会参加、研究成果発表を行う予定である。
|