研究課題/領域番号 |
19K24119
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
石川 崇典 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (70845809)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | UCA1 / lncRNA / 骨芽細胞分化 / 骨形成 |
研究実績の概要 |
ヒトゲノムからは30,000種もの長鎖非コードRNA(lncRNA)が転写されており、うち20,000種近くが生命現象に関わっている。本研究ではがん関連lncRNAとされてきたlncRNAの1つであるurothelial cancer associated (UCA)1の顎顔面骨形成過程における生理的機能の解明を目指している。 UCA1がヒト軟骨細胞分化早期に発現し、それに促進的に働いていることはすでに申請者らが明らかにしている。本研究では申請当初の計画通り、このlncRNAの骨芽細胞分化および骨形成における機能のin vitroにおける検証を進めた。すなわちヒト骨髄間葉系細胞 (hBMSC) を骨芽細胞分化誘導培地にて培養し、UCA1および骨芽細胞マーカー遺伝子の経時的な発現を定量するとともに石灰化をAlizarin Red染色で確認した。その結果、骨芽細胞マーカー遺伝子であるALPとSPP1 (OPN) の発現の上昇と石灰化物の沈着が起こり骨芽細胞への分化は確認された。そして驚いたことにUCA1の発現は骨芽細胞分化が進むにつれ逆に減少した。ただしこの実験条件では、骨芽細胞後期分化マーカーであるOCNの遺伝子発現の誘導までには至っていない。以上の結果は、UCA1は骨芽細胞への初期分化過程には影響しないか、抑制的に働くこと、その初期分化促進効果は軟骨細胞特異的であることを暗示している。これを検証するために、当初の計画通りにhBMSCにUCA1を強制発現し、骨芽細胞へ分化誘導する実験に初年度末から着手している。 なおUCA1がマウス軟骨細胞の分化を促進することはすでに明らかなので、たとえ骨芽細胞分化が影響を受けずとも、UCA1を全身で発現するノックインマウスには顎顔面骨格に表現系変化が期待される。したがって初年度より当該マウスの作成を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべての研究結果が予期していた通りに進んでいるわけではないが、新たな知見が得られており、それが今後の研究にむしろ広がりを与えている。
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今後の研究の推進方策 |
予想外の結果が得られているが、これもまた非常に興味深い。結果のいかんにかかわらず機能解明戦略は定まっているので、基本的に研究計画に沿って続け、UCA1の骨芽細胞分化・骨形成への機能解明を目指す。すなわち現在進行中のhBMSCに続いて、マウス骨芽細胞様MC3T-E1細胞に対しても、レンチウイルスベクターを用いてUCA1の強制発現実験を行い、これら細胞の分化・形質へのUCA1の影響を検証する。MC3T-E1における機能が確認できれば、UCA1を全身で発現するものに加えて、骨芽細胞特異的に発現するゲノム編集マウスをCRISPR/Cas9 knock-inシステムで作成することも考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の物品や実験材料の使用等により、物品の購入を本年度は要さなかった。来年度に、細胞培養や遺伝子発現確認等に必要な消耗品や細胞等を購入する予定である。
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