矯正歯科治療を行うことで、不正咬合が改善でき、それにより咀嚼や発音などの口腔機能の改善・口腔衛生状態の向上が期待できる。しかし、矯正装置の装着によって口腔清掃が装着前と比較して困難となることなどから、矯正歯科治療中に発生するう蝕や歯肉炎といった口腔細菌による感染症が、副作用としてまれに起こる。これらの口腔細菌の感染症による副作用を予め予知し、予防することができれば、矯正歯科治療の大きな質向上に繋がる。そこで我々は、矯正歯科治療を受ける患者を対象としてプラークや唾液を採取し、次世代シークエンサーによる解析をはじめとした検討を続けてきた。次世代シークエンスによる検討では、矯正装置の装着によって歯周炎へ移行する際に優位となる嫌気性菌が、矯正歯科治療を受けている患者でもその割合を増加させていることが明らかとなった。また唾液検査によって、う蝕原因菌であるS.mutansとLactobacillusの培養や唾液緩衝能・pH等について検討したところ、性差及び年齢によって異なる傾向を示すことが明らかとなった。今後も被験者数を増やし、継続していく予定である。
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