研究課題/領域番号 |
19K24125
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中嶋 光 熊本大学, 病院, 医員 (20849103)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | Osteopontin / 口腔扁平上皮癌 / 放射線耐性 / CD44 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌(OSCC)において、放射線治療は重要な治療戦略の一つであるが、放射線抵抗性を示す細胞の存在が患者予後を極めて不良にする。OPNを中心としたOSCC放射線耐性機構を明らかにし、OPNを標的とした新たな治療法開発に繋げることを目的に研究を行った。今年度の実績として術前化学放射線療法施行後のOSCC患者検体を用いて、OPNの免疫組織学的染色で発現解析を行い、組織中のOPN発現と化学放射線療法の治療効果が有意に相関することを示した。これによりOPNがOSCC組織中で化学放射線療法に対する耐性機構獲得に寄与している可能性を示した。またOSCC培養細胞にOPN添加し、放射線照射の感受性試験を行い、OPN添加により有意に放射線照射後の生存率が上昇することを示した。これによりOPN添加が放射線耐性能を向上させることを示した。また上記の実験系にさらにOPNの代表的なレセプターであるCD44の中和抗体を投与すると、OPN添加により得られた放射線耐性能がキャンセルされることを示した。同様にOPN添加により放射線照射後の細胞死に関与する活性酸素種(ROS)現象を認めたが、CD44中和抗体投与によりこの反応もキャンセルされることを示した。これにより添加したOPNがCD44の経路を介してROSを制御し、OSCC細胞の放射線耐性能獲得に寄与していることを示した。 さらにOPN添加し放射線照射を行った細胞内のグルタチオン(GSH)量が有意に上昇し、CD44中和抗体投与により反応がキャンセルされることも示した。これによりOPN-CD44経路が細胞内の還元酵素であるGSHを制御している可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染拡大による今後の研究活動に不安はあるが、今年度の進捗については概ね順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はin vitroでの実験系をさらに推進し、OPN-CD44経路によるOSCC細胞の放射線耐性機構のさらなる理解を深めるとともに、in vivo 担癌マウスモデルによるスルファサラジン併用放射線療法の有効性の検討を行う。 各種条件下で放射線照射を行い、マウスの移植腫瘍片および各種臓器の摘出を行い、各種標的分子の免疫組織化学解析およびDNAマイクロアレイ解析を行う。 またin vitroとin vivo実験系の結果を元に、放射線抵抗性OSCCにおけるOPNの生物学的意義やスルファサラジン併用の有用性を明らかにすることで、将来的には進行OSCC患者における放射線治療にスルファサラジンを併用する医師主導型臨床研究に繋げていくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった抗体の購入費が少なく済んだため。また参加予定であった学会が不参加となり参加費や旅費が不要となったため。
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