研究課題
これまでに、土壌微生物由来の新規化合物 Nonaethylene glycol mono (’4-Iodo-4-biphenyl) ester (9bw)は、がん抑制遺伝子p53に変異のある腫瘍細胞に対しては強い増殖抑制効果を示すが、p53野生型のがん細胞に対してはほとんど毒性を持たないことを確認している。9bwが電子伝達系の呼吸鎖複合体Iの活性を阻害し、細胞のATPの産生を抑制することで腫瘍細胞の増殖抑制ひきおこすことは分かっていたが、この阻害効果はp53の変異の有無に関係なく同等に起こり、またATPの減少量にも違いがみられなかった。しかしながら、これまでの細胞内ATP濃度の測定方法には技術的に問題があった可能性が出てきたため、本年度は方法を変えて解析を行った。これまでは培地に直接ATP測定試薬を入れる方式で測定を行っていたが、培地中の成分の影響を受けて結果がばらつく可能性が否定できないため、培地を除去し、溶解バッファー中に溶出したATPを測定する方式を試みた。また測定時間も、これまでは9bw投与後8時間目のみのATP濃度を測定していたが、本年度は投与後1~2時間おきに12時間目までの間、継時的に濃度測定を行った。その結果,解析したほとんどの細胞において、投与後4時間目以降からATP濃度の低下が見られ始めたが,p53変異の有無と低下のタイミングや低下量に顕著な違いは見られなかった。
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Cancer Science
巻: 111 ページ: 2943-2953
10.1111/cas.14512