本研究では新規ポリエチレングリコール誘導体9bwが、変異型p53を持つ細胞に対し特に強い毒性を示す原因の解明を試みた。結果的に、現時点で明確な理由はつかめていないが、少なくとも9bw による酸化的リン酸化の抑制とそれに伴うATP産生の低下レベルにはp53野生型と変異型の間で差が無いことが確認できた。多くの抗腫瘍薬は細胞のDNAを損傷し、それにより細胞死を誘導するが、変異型p53を持つ細胞は、こうしたタイプの抗腫瘍薬に対して強い耐性を示すことから、p53変異型の腫瘍細胞に対して特に強い障害性を示す9bwは理想的な抗腫瘍薬候補であり、その作用機序を調べる本研究の社会的意義は大きいと考える。
|