研究課題/領域番号 |
19K24132
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
渡邉 由梨子 日本大学, 松戸歯学部, 専修医 (90849340)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 脳微小透析法 / 側坐核 / DA / NA |
研究実績の概要 |
中脳辺縁系ドパミン(DA)神経が投射する側坐核にはα1受容体が分布しており,同部位へのα1 受容体作動薬のmethoxamine の灌流投与はα1 受容体を介してDA 放出を抑制する。α1 受容体作動薬にはmethoxamine とは異なりimidazoline 系のcirazoline があるが,この作動薬はDA 放出を促進する。当該年度は,このcirazolineのDA放出作用についてα1 受容体の関与の面から無麻酔非拘束ラットを用いたin vivo 脳微小透析法により解析した。Methoxamineの投与は側坐核のノルアドレナリン(NA)放出に影響を及ぼさないがα1 受容体拮抗薬のprazosin が誘発したNA 放出は抑制するので,試料中の基礎NA 量とprazosin 誘発性のNA の増大へcirazoline が及ぼす効果も検討した。CirazolineのDA 量に対する作用へのα1 受容体の関与の検討のためprazosinの併用実験も行った。使用薬物は側坐核へ逆透析により灌流投与した。 その結果,Cirazoline(1.0 × 10-4 M)はNA量に影響しなかったが,DA量は約150% 増加させた。NAとDAの量が著変を起こさない用量のcirazoline(1.0 × 10-7 M)はprazosinによるNA量の約220%の増加を約140% まで低下させたが,DA量の約60% の減少には影響を及ぼさなかった。CirazolineによるDA量の増加は,methoxmineのDA放出抑制を打ち消したprazosin(1.0 × 10-7 M)で減弱傾向だったが,このprazosin の効果は統計学的には有意ではなかった。以上のことからcirazoline の側坐核への灌流投与は,α1 受容体刺激を介さずに同部位のDA 放出を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで申請者のグループが実験に使用してきたα1受容体作動薬のうちimidazoline系のcirazolineは,側坐核の細胞外DA量を予想に反して増大させた。このため,当該年度はcirazolineの側坐核のDA放出促進メカニズムについてこれまでの諸報告に基づいてα1受容体の関与の面から考察した。この検討の結果は,令和2年6月にオンラインで開催した第142回日本薬理学会関東部会で発表した。また,側坐核の細胞外GABA量の制御に関与するGABAトランスポーターサブタイプの検索を行っており,その成果の発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した生体由来の試料のGABAの分離・定量のための条件を生かし,δおよびμ受容体系薬物の側坐核のGABA神経活動への作用メカニズムの解明につなげる前段階として,実験動物の脳内のGABA量の制御に関与するGABAトランスポーターサブタイプの検索に取組むことを計画している。 【役割分担】統括,神経化学・行動学・組織学実験の遂行:渡邉由梨子(研究代表者),実験の遂行;青野悠里(研究協力者),川島央暉(研究協力者),齊藤幸治(研究協力者),研究の助言:三枝 禎(研究協力者),J. L. Waddington(海外研究協力者)
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務する付属病院口腔外科等でのコロナ禍への対応,妊娠,産休にともない勤務体制を見直すことにし,837,749円は使用せずに繰り越すことにした。 次年度以降へ繰り越す837,749円は,実験のための物品費と研究情報収集のためのオンライン学会の参加登録費として使用することを計画している。主たる使途は,実験動物,試薬,HPLC消耗品の購入,学会参加登録費である。
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