研究課題/領域番号 |
19K24135
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宍戸 駿一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20850613)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ファイトケミカル / ポリフェノール / プロアントシアニジン / 卵巣摘出ラット / 腸内細菌 / 骨粗鬆症 / 抜歯窩 / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
ファイトケミカルの一種であるプロアントシアニジンは,様々な生理活性を有する.我々の研究室では,種々の生理活性の一つとしてプロアントシアニジンの経口投与が骨粗鬆症モデル動物(卵巣摘出ラット)の頭蓋骨に作製した骨欠損の治癒を促進することを発見した.本研究は,この骨治癒促進効果を歯科臨床に応用することを目指し,最適なファイトケミカルを選定するために,プロアントシアニジンやその他のファイトケミカルが骨粗鬆症モデル動物の抜歯窩(歯槽骨)の治癒に及ぼす影響を評価するとともに,その作用機序を解明することを目的とする. 本年度は,通常のラット(卵巣摘出なし)において抜歯窩の治癒にかかる期間を正確に把握するために,東北大学の動物実験専門委員会の承認の下,動物実験を行った.7週齢の雌性Wistarラットを用い,1週間の順化飼育期間を設けた後に,歯科用探針を用いて上顎左右第一大臼歯の抜歯を行い,抜歯窩の治癒の評価を行った.試験動物を3つのグループに分け,抜歯窩の治癒を評価するまでの期間は,Group 1: 2週間,Group 2: 4週間,Group 3: 8週間とした.治癒期間経過後,試験動物を安楽死させ,上顎骨を採取し,マイクロCT分析により三次元的に抜歯窩における新生骨の形成量を評価した.分析の結果,抜歯後2週間では抜歯窩内の側面から新生骨が徐々にでき始め,4週間後で抜歯窩のほとんどが疎な新生骨で満たされることを確認した.さらに8週間後には,新生骨の密度が上がり,抜歯窩と周囲の歯槽骨との境目が認識できない程度まで治癒した.しかしながら,抜歯前あるいは抜歯直後と比較して,歯槽骨の垂直的な高さの減少が認められた.現在,脱灰組織標本を作製中であり,病理組織学的な分析も併せて抜歯窩の治癒を多角的に評価する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北大学の動物実験専門委員会の承認を受け,ラットを用いた動物実験を開始した.通常のラットにおける抜歯窩の治癒をマイクロCT分析により評価し,治癒期間を把握することができた.動物実験を行う基盤を整え,今後引き続き実験を進めるための基礎的なデータが得られたため,全体として概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は引き続き,骨粗鬆症モデル動物として卵巣摘出ラットを使用した動物実験を行う.卵巣摘出を行った1週間後に上顎左右第一大臼歯を抜歯し,抜歯窩の治癒を評価する予定である.また,卵巣摘出の翌日から実験終了時まで1日1回ファイトケミカル投与を行う.以上の方法により,卵巣摘出およびファイトケミカルが抜歯窩の治癒に及ぼす影響を確認する. 骨治癒の評価方法として,マイクロCT分析,免疫組織染色を用いた病理組織学的分析を予定している.また,骨治癒に差があることを確認した場合,メカニズムの解明を目的とした解析を行う.具体的には,リアルタイムPCRによるラット糞便中の腸内細菌の分析や,外側尾静脈から採取した血液を使用した血漿中の物質のエストロゲン様活性の評価を行う.さらに,血中のビタミンD代謝物およびカルシウム濃度を,それぞれ化学発光免疫測定法と誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いて測定し,ファイトケミカルの経口投与が骨粗鬆症ラットの歯槽骨治癒に影響を及ぼす作用機序の解明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた,免疫組織染色による組織学的分析をまだ行っていないため,関連する試薬等の購入時期が年度内に間に合わなかったことにより,次年度使用額が生じた.使用計画としては,令和2年度に必要な実験機器や試薬,消耗品の購入に充てる予定である.
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