研究課題/領域番号 |
19K24137
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤井 真由子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (80844357)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 歯髄組織 / 低酸素 / HIF1 / TNFa / IL1b / IL6 |
研究実績の概要 |
周囲を硬組織で囲まれている歯髄組織は、正常状態でも低酸素状態と言われているが、う蝕に継発して歯髄炎が惹起されると歯髄内圧の亢進に伴い循環障害が生じ、歯髄組織はより低酸素な状態に置かれる。すなわち、歯髄炎の病態を低酸素状態が深く修飾している可能性が推察される。本研究の目的は、歯髄炎の進展に及ぼす低酸素の役割について明らかにすることである。 低酸素状態で特異的に発現する転写調節因子の一つであるhypoxia-inducible factor-1α (HIF1a)は、lipoporysaccharide(LPS)刺激に応じてヒト歯髄細胞より産生される各種炎症性メディエーターの遺伝子発現およびタンパク産生を深く修飾しているが、さらにその調節メカニズムの詳細について探求を試みた。 LPS刺激によりヒト歯髄細胞から産生される代表的な炎症性サイトカイン;IL1b、TNFaは、低酸素(1%)培養、HIF1a強制発現、HIFの分解に関与するプロリル水酸化酵素(PHD)阻害薬Dimethyloxaloylglycine (DMOG)投与により亢進したが、HIF1aはIL1b、TNFa産生を調節するNFkBシグナルを増強することが明らかになった。すなわち、低酸素状態に陥った歯髄組織において、HIF1aはNFkBシグナルを亢進し、その下流にある炎症性メディエーターIL1b、TNFaの産生を正の方向に制御していると推察される。一方で炎症性サイトカインIL6は低酸素(1%)培養、HIF1a強制発現によりその産生が低下した。LPS刺激後24時間までのIL1b、TNFa、IL6の遺伝子発現量の経時的な推移を確認したところ、IL6は持続的に発現しており、低酸素培養による産生低下はIL1b、TNFaの発現上昇の後に起きていることが確認された。従ってIL6の産生低下にはNFkBシグナルとは異なるシグナルを介する可能性が推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進行しているが、仮説とは異なる結果も得られた。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、研究の中断を余儀なくされており、当初の予定よりも若干の遅延がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
IL6をはじめとするIL1b、TNFa以外の炎症性メディエーター産生におけるHIF1aの役割について検討する。HIF1aの核内移行を阻害またはHIF1aを分解促進しHIF1aの機能を抑制したヒト歯髄細胞をLPS刺激し、炎症性サイトカイン発現解析、NFkB等のシグナル解析を行う。ラットを用いた実験的歯髄炎を誘発し、歯髄組織の炎症病態を組織学的あるいは免疫担当細胞に対する抗体を用いた免疫組織化学的染色により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はおおよそ物品費としては計画どおりであったが学会参加について海外、国内ともに発表をしなかったため、その費用として次年度使用額が生じた。またコロナの影響で研究計画を縮小しなければならなかったため、その分の物品購入、実験動物の購入を行っていないため、次年度に、購入を行う。
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