研究課題
歯髄組織は、周囲を象牙質という硬組織で囲まれているため、歯髄炎といった炎症が惹起されると容易に歯髄内圧が亢進し、その結果血管が圧平され容易に虚血に陥る。虚血に陥った歯髄組織においては、循環障害の結果として低酸素、低栄養状態が誘発される。しかし、歯髄炎の病態をこの低酸素状態がどのように修飾しているのかについては不明な点が多い。本研究においては、ヒト健全抜去歯の歯髄より分離した歯髄細胞を低酸素(1%)下で培養、あるいはhypoxia-inducible factor-1 alpha(HIF1a)を歯髄細胞に強制発現したあと、Lipopolysaccharide(LPS)にて刺激し、産生される炎症性メディエーターおよびNFkBシグナルについて検討した。その結果、LPS刺激によりNFkBシグナルが活性化され、Interleukin 1 beta(IL1b)、tumor necrosis factor alpha(TNFa)といった代表的な炎症性メディエーター産生が誘導されるが、低酸素(1%)培養またはHIF1aの強制発現により、NFkBシグナルはさらに活性化され、炎症性メディエーター産生も亢進した。一方、IL6産生は、LPS刺激により誘導されるが、低酸素(1%)培養またはHIF1aの強制発現により、mRNA発現およびタンパク発現ともに抑制された。IL6はNFkBシグナルの下流でも発現するが、それ以外にCEBP/bシグナルの活性化も関与している。今回、JAK─STAT経路の負の制御因子として知られているSuppressor of cytokine signaling 3 (SOCS3)がHIF1a存在下で発現が亢進し、LPS刺激下でのCEBP/b産生の制御に関与することを確認した。
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