口腔粘膜にはしばしば、T細胞の浸潤を特徴とする慢性化した病変を認める。 炎症組織には、炎症の増幅(免疫賦活)にブレーキをかける「免疫抑制」に働く細胞や分子が出現する。これらの細胞や分子の出現に伴って「免疫賦活/免疫抑制バランス」が変化していることが、炎症が慢性化する理由の一つと考えられるが、それを実験的に示した例はない。本年度は、前年度に引き続き、口腔粘膜に生じる炎症性疾患の一つとして、抗がん剤である、5-Fluorouracil(5-FU)の投与に伴い口腔粘膜に生じる粘膜炎へのT細胞の関与について、マウスモデルを用いて検討した。抗がん剤は、増殖の活発な上皮細胞に作用して再生を阻害するため、些細な物理的ダメージによっても上皮細胞のバリア構造が破壊される。上皮バリア機能の低下は、病原微生物や有害物の生体内への侵入を許し、宿主-細菌叢の均衡を破壊する。これまで、粘膜炎の惹起における研究の対象は自然免疫細胞に限局しており、獲得免疫を介した獲得免疫を介した炎症惹起機構については不明であった。本研究において、我々は、抗がん剤誘導性口腔粘膜炎モデルを樹立し、炎症局所には、自然免疫細胞のみならず、IFN-gamma発現T細胞や制御性T細胞が集積することを明らかにした。
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