研究課題/領域番号 |
19K24139
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
原 実生 新潟大学, 医歯学総合研究科, 助教 (60848266)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 歯肉上皮バリア / TRPV1受容体 / カプサイシン |
研究実績の概要 |
歯肉上皮バリアは外来因子に対する生体防御の最前線で物理的バリアとして機能し、そのバリアの破綻が歯周炎の発症・進行と密接に関与していることが報告されている。近年同定されたTransient receptor potential (TRP) タンパクファミリーは、温度・機械刺激・化学刺激などによって活性化されるカルシウムイオンチャネルで、様々な疾患との関連性が報告されている。上皮細胞に発現するTRPタンパクが皮膚や血管のバリア機能制御に関与することが知られているが、歯肉上皮のバリア機能における関与については報告が少ない。本研究の目的は歯肉上皮細胞のバリア機能制御におけるTRPチャネルタンパクの関与とその分子メカニズムを明らかにすることで、宿主機能のバリア機能強化という新しい視点から、歯周病予防・治療法の確立を目指すことである。 本年度は歯肉上皮バリアにおいてTRPアゴニストがバリア強化機能を持つかを明らかにし、その分子メカニズムを解明することを目標としてin vitroにおいて解析を行った。まず、上皮バリア機能低下を誘導することが報告されているTNF-a、P.gingivalis LPSでヒト歯肉上皮細胞株Ca9-22をし、歯肉上皮バリア機能が遺伝子レベル、タンパクレベルで低下することを確認した。次にTRPファミリーの一つであるTRPV1受容体に着目し、アゴニストであるカプサイシンを各種濃度で添加して歯肉上皮バリア機能に与える影響を検証した。細胞為害性のない濃度においてカプサイシン単独では歯肉上皮バリア機能に影響を与えなかった。カプサイシンの前処置ののち歯肉上皮細胞株Ca9-22にTNF-a刺激を行うと、バリア関連遺伝子の発現が低下することが認められた。 これまでの検討条件において、TRPV1アゴニストであるカプサイシンが歯肉上皮バリア機能を強化する明らかな傾向は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は歯肉上皮バリアにおいてTRPアゴニストがバリア強化機能を持つかを明らかにし、その分子メカニズムを解明することを目的としていた。TRPV1受容体とそのアゴニストであるカプサイシンに着目しTNF-a、P.gingivalis LPSを用いてヒト歯肉上皮細胞株Ca9-22を刺激し検討を行ったが、バリア機能に関連する遺伝子発現、タンパク質発現では有意な結果が得られなかった.
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今後の研究の推進方策 |
次年度はin vivoにおいて解析を行う予定であったが引き続きin vitroにおける解析を実施する。昨年度は歯肉癌由来細胞株であるCa9-22を用いて解析を行ったが、本年度は正常初代培養細胞やSV40 T抗原を導入し不死化させた歯肉細胞株を用いてより生体に近い条件で検証を行う。また、種々のTRPVチャネルタンパクが歯肉上皮に発現していることから、他の受容体およびそのアゴニストにも着目して同様の解析を行い、バリア強化機能を持つか検証し、そのメカニズムを解析する。 その後in vivoにおいてTRPアゴニストが歯周炎抑制効果を持つか検証する。具体的には結紮誘導歯周炎モデルマウスへTRPアゴニストの経口投与を行い、歯周炎の重症度を歯槽骨破壊レベル、炎症性サイトカインの産生レベルにより評価する。歯周炎抑制能が認められた場合、メカニズムの解析として歯肉上皮バリア機能に着目し、バリア関連遺伝子およびタンパク発現をリアルタイムPCR、免疫組織染色法により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた遺伝子解析試薬の購入を次年度に繰り越したため。
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