研究課題/領域番号 |
19K24140
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
設樂 仁子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (10848261)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 舌運動 / 舌圧 / 水嚥下 |
研究実績の概要 |
摂食嚥下障害患者の多くは高齢者であり,嚥下時舌運動の加齢変化を理解することは,リハビリテーションを行う上で非常に重要である.本研究では高齢者の舌運動と舌圧の同時計測により,高齢者の特徴的な舌運動パターンと,舌運動と舌圧発現様相との関係を明らかにすることを目的としている. これまで,健常若年者のデータ解析を進め,健常若年者の水嚥下時ととろみ水嚥下時や,口腔底に水を保持して嚥下するDipper typeと舌背上に水を保持して嚥下するTipper typeの2種類の水嚥下について明らかにしてきた.また,健常若年者と舌切除患者の舌運動と舌圧についても評価を行ってきた.舌切除患者において,舌は上下運動することなく口蓋に接触し,舌圧発現中,何度も舌が前後方向に動き,口蓋に接触している時間も長かった.さらに皮弁部は口蓋に接触していても舌圧が発現されず,保存されている舌根部のみ舌圧が発現した.これらは,舌を代償的に動かすことで,口腔から咽頭へ水を移送しており,また,口蓋に接触している時間が長いため,舌圧発現時間も長くなったと考えている. 2020年度は実際に高齢者の計測を開始し,3人の測定を行い,解析を進めている.また,健常者の舌運動と舌圧について論文にまとめ,Journal of Oral Reabilitationに掲載された. 2021年度は被験者数を増やし,水嚥下やとろみ水嚥下,試料の変化についてこれまでに明らかになった健常若年者の結果と比較して舌運動と舌圧の加齢変化についての分析を進めていく予定である.加齢による嚥下時舌運動の変化を評価できれば,臨床の場において高齢者の舌運動の特徴を加味した嚥下障害に対する治療計画やリハビリテーションの提案に役立てることができると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験の被験者は新潟大学医歯学総合病院が歯科外来に通院中の65歳以上の患者で義歯未使用者で咬合支持を有する高齢者12名を想定している.2020年度は3人の計測を行い,解析を進めているが,被験者数が少ないため,健常者との評価はできていない. 申請者が所属していた義歯診療科の歯科医師にリクルートを行い,被験者を集めていたが,義歯未使用者が少ないこと,実験内容に同意を得られないこともあったため,被験者数を増やすことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
高齢者に対して計測できる環境は整っているため,2021年度は他の診療科にもリクルートを行い,被験者数を増やし,計12人のデータを集める予定である. 得られたデータを分析して高齢者の特徴的な舌運動パターンや舌圧との関係を明らかにし,さらに,すでに分析済みである若年者と比較して加齢変化について分析し,学会発表や論文にまとめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で学会がウェブ開催になっていることと,計測できた被験者数が少ないことにより,データをまとめられず学会発表等ができていない. 被験者数を増やすことでデータ数を増やし,学会発表や論文投稿に向けて準備を行っていく.
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