摂食嚥下障害患者の多くは高齢者であり,嚥下時舌運動の加齢変化を理解することは,リハビリテーションを行う上で非常に重要である.本研究では高齢者の舌運動と舌圧の同時計測により,高齢者の特徴的な舌運動パターンと,舌運動と舌圧発現様相との関係を明らかにすることを目的としている. これまで,健常若年者のデータ解析を進め,健常若年者の水嚥下時ととろみ水嚥下時や,口腔底に水を保持して嚥下するDipper typeと舌背上に水を保持して嚥下するTipper typeの2種類の水嚥下について明らかにしてきた.また,健常若年者と舌切除患者の舌運動と舌圧についても評価を行ってきた.咀嚼時の舌運動についても、実験系を構築し測定解析を行っている。グミゼリー咀嚼時には,舌が下顎開口後最大開口までの間に前方へ,最大開口後閉口運動の間に咀嚼側へと動いていることが確認できた.また,閉口後にも右側・後方へ動き元の位置へ戻っていた.これらの動きは,食塊を歯列上に乗せ,歯列により咀嚼された食塊を再度舌上に乗せるためと考えている. 2020年度より実際に高齢者の計測を開始し,2021年度で計11人に対して測定を行い解析を行ってきた. 今後は水嚥下やとろみ水嚥下,試料の変化についてこれまでに明らかになった健常若年者の結果と比較して舌運動と舌圧の加齢変化についての分析を進めていく予定である.まずは日本老年歯科医学会第33回学術大会で発表を予定している.加齢による嚥下時舌運動の変化を評価できれば,臨床の場において高齢者の舌運動の特徴を加味した嚥下障害に対する治療計画やリハビリテーションの提案に役立てることができると考えている.
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