研究課題/領域番号 |
19K24168
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
西村 香織 富山県立大学, 看護学部, 助教 (20846133)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 在日外国人 / 妊産婦 / コミュニティ / 文化 / 育児の孤独感 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本で妊娠・出産・育児を行う外国人妊産婦とそのコミュニティに焦点をあて、①在日外国人妊産婦のコミュニティ内の情報ネットワークや問題解決の実態を明らかにし②コミュニティを対象とした支援プログラムを開発すると同時に③コミュニティに基づく看護職向けの支援プログラムを開発することである。この支援プログラムを開発し、実践することにより、在日外国人妊産婦の安全、安心な医療を確保することができると考えられる。 1年目は①在日外国人妊産婦のコミュニティ内の情報ネットワークや問題解決の実態を明らかにすることを目的に、在日外国人妊産婦とそのコミュニティへの参加観察及びインタビュー調査を実施した。研究協力者は、研究に同意の得られた在日外国人妊産婦10名とその家族や親戚、友人などのコミュニティであった。本研究は、フィールドワークを通して特定集団の文化の文脈における経験を記述するエスノグラフィーの手法を用いた。研究計画に沿って妊娠・出産・育児期に縦断して妊産婦のコミュニティに参入した。希望に応じて妊婦健康診査や出産時の付き添い、及び妊産婦の自宅への家庭訪問やコミュニティの集まる場でのインタビューを実施した。 研究協力者の概要は、国籍別では、ベトナム、中国、フィリピン、モンゴル、アメリカ、ロシアであった。現在までの分析結果として、日本で生活しながらも、母国のコミュニティと共に妊娠・出産・育児を行う妊産婦がいる一方で、夫のみがサポーターであり支援者が少ない妊産婦も示唆された。また、日本で妊娠・出産・育児を行う上で、医療専門職へのアクセス不足や育児の孤独感などが明らかになった。現在6名までのデータ収集が終了し、残り4名の調査および分析を行っている。2年目に②③の支援プログラムを在日外国人妊産婦とそのコミュニティと共に作成していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の計画として、倫理審査を終え①在日外国人妊産婦のコミュニティ内の情報ネットワークや問題解決の実態を明らかにするために、参加観察およびインタビュー調査を実施した。研究協力機関から対象を選定していただき、日本で妊娠・出産・育児を行う外国人妊産婦10名とその家族、親戚、友人などのコミュニティから研究協力の同意を得ることができた。現在までに6名の妊娠期から育児期までのデータ収集が終了し、分析をすすめている。残り4名においても妊娠期までの調査が終了している。 当初、データ収集期間を4月までと計画していたが、妊産婦の出産予定日に合わせて7月までに延長する予定である。実施の遅れについては、データ収集期間に妊娠・出産・育児を迎える妊産婦が少なく、期間を延長したことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の計画としては、残り4名の出産・育児期のデータ収集および分析を行い、それらの結果から②コミュニティを対象とした支援プログラムを開発すると同時に③コミュニティに基づく看護職向けの支援プログラムを開発する。支援プログラムの作成においては、データ収集を行った妊産婦に継続して協力が得られる状況であり、在日外国人妊産婦とそのコミュニティと共に支援プログラムを作成していく。 研究計画の変更点として、コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響により、研究協力者である妊産婦への感染リスクを考慮し、データ収集方法を家庭訪問から電話でのインタビュー調査に変更した。変更点について、倫理審査の承認を得て、残り4名の研究協力者に説明し、同意が得られている。 また、妊産婦の社会的、文化的背景を知り、言動や行動、思考への理解を深めることを目的に、ベトナムでの医療視察を予定していたが、延期となっている。今後、状況に応じて視察を計画していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
妊産婦の文化的、社会的背景を知り、言動や行動、および思考への理解を深める目的でベトナムでの医療現場およびコミュニティの視察を予定していたが、現在コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、延期となっている。そのため、状況に応じて視察を予定している。また、国際学会での成果発表を行う予定である。
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