先進国において非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が急増している。NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型である。肝硬変・肝がんに進展するだけではなく、生活習慣病の発症・発展にも関わってくるため、早期発見が重要課題となっている。しかし、NAFLDを用意に鑑別できるスクリーニングマーカーはない。そこで本研究では疾患発症の一因として注目されているDNAメチル化に着目した。新たなスクリーニングマーカー開発のための基礎的検討として、DNAメチル化とNAFLDとの関連を明らかにすることを目的とした。 検診受診者の末梢血からDNAを抽出し、Pyrosequencing法にてメチル化率を測定した。本研究ではNAFLD発症要因である肥満、脂質異常症、喫煙などとの関連が報告されているTXNIP、SOCS、HIF3A遺伝子のDNAメチル化率を測定し、腹部超音波検査にて判別した脂肪肝との関連について解析した。その結果、HIF3AおよびSOCSの遺伝子メチル化率は脂肪肝の有無によって差は認められなかった。TXNIP遺伝子のDNAメチル化率は脂肪肝が認められなかった者と比較して脂肪肝が認められた者において有意に低値を示した。さらに脂肪肝が認められた者を重症度別に分け、各遺伝子のDNAメチル化率を比較した。SOCSとHIF3A遺伝子メチル化率は脂肪肝の有無別での比較と同様に、有意な差は認められなかった。TXNIP遺伝子メチル化率を重症度別で比較した結果、脂肪肝が認められなかった者と比べて重度脂肪肝が認められた者では有意に低値を示した。本研究によってTXNIP遺伝子のDNAメチル化率と脂肪肝との関連が明らかになった。
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