本研究では、特定健診の法定項目を用いて算出できる脂肪肝指数:fatty liver index (FLI)の健診における実用化に向け、その有用性を検証することを目的として、FLIの脂肪肝診断能ならびに動脈硬化およびその危険因子との関連を検討した。今年度は詳細なリポ蛋白分画(サブクラス)のトリグリセライド(TG)とコレステロールを測定し、FLI上昇に関連する血中脂質プロファイルを明らかにした。 鶴岡メタボロームコホート研究の参加者のうち595名におけるベースライン調査の凍結保存血清を用いて、カイロミクロン(CM)、VLDL、LDL、HDLのサブクラスのコレステロールとTGを高速液体クロマトグラフ法で測定した。対象者をFLIの三分位数により3群に分類し、傾向検定を用いてFLIと各指標との関連を検討した。対象者の平均年齢は64.5歳、FLIの中央値は24.7であった。TotalコレステロールおよびVLDL、LDLのサブクラスのコレステロールはFLI三分位群で有意な単調増加の傾向を示した。HDLのコレステロールはvery large HDL、large HDL、medium HDLで有意な単調減少の傾向を示したが、small HDL、very small HDLでは有意な単調増加の傾向を認めた。TGもコレステロールとほぼ同様の傾向を示したが、medium HDLのTGでは有意な単調増加の傾向を認めた。本研究の結果、FLIが高いほど動脈硬化を促進することで知られるVLDLやLDLのコレステロールとTGが上昇することが示唆された。一方、HDLは抗動脈硬化作用を有し、サブクラスによりその機能が異なることが知られており、本研究ではFLI値が高いほどサイズの大きなHDLのコレステロールとTGが減少し、サイズの小さなHDLのコレステロールとTGは増加する傾向が示唆された。
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