前年度までの研究実績として、先行研究レビューにより、主に学齢期にある医療的ケア児の健康関連QOLと、通所サービスや学校で行われる医療的ケアの実施体制との関連が示唆された。また、全国の医療型児童発達支援事業所を通じて、未就学期の医療的ケア児と暮らす保護者を対象に質問紙調査を行い、219人から回答を得た。年齢、言語理解、運動機能、医療依存度を調整した結果、保育園や児童発達支援等の通所サービスで主介護者の付添なしに看護師から受けるケアは、医療的ケア児の健康関連QOL総得点および友人関係に関する得点の向上と関連した。 さらに、常勤の看護師が少なく、特別支援学校よりも医療的ケア支援体制を整えることが難しい、通常の学校内での医療的ケアに焦点を当てた看護支援モデルの開発を進めた。通常の高等学校に在籍する医療的ケア児を対象に、学校医、学校長、養護教諭と話し合い、保護者の代わりに看護師が学校内でケアを行う手続きの確認や緊急時対応のフローチャート作成を行った。学校内でのケアの経験がある看護師と、医療的ケア児およびその保護者とミーティングを行って、保護者から看護師へのケアの引継ぎをスムーズに行うための方法を確立した。 本年度は、作成した看護支援モデルを用いて、通常の高等学校に在籍し、気管切開管理と経管栄養を要する医療的ケア児を対象に、医療的ケアを代替する看護師を配置して、保護者の付添なしに通学できる期間を設けた。介入前後で、医療的ケア児の社会性や自律性に関する健康関連QOLや、他者への意思表示の方法や頻度について検証した。結果として、仲間関係に関する健康関連QOL得点が上昇する傾向がみられ、吸引や排泄の希望は絵カードやジェスチャーを用いて看護師に伝えることができた。また、安全性の面でも、保護者と変わらない方法とタイミングで看護師からケアを受け、授業に集中できたとの回答を医療的ケア児本人から得た。
|