現代日本の昼夜を問わない社会活動を支えているのは、夜間労働者(交代勤務者)である。夜間労働者は、本来の生物学的リズム(日中活動し夜間に眠る)から逸脱したスケジュールで勤務することが求められるため、昼間労働者と比較して労働のパフォーマンスや安全性において問題が生じやすいと考えられている。特に、実際に発揮できるパフォーマンスと主観的なパフォーマンスの間に乖離が生まれると、労働者の自覚を促して疲労回復などの対策を取らせることが難しく、ミスなどが起こりやすい状態になってしまう可能性が高まってしまう。 そこで本研究では、夜勤による勤務パフォーマンスの変化とその変化がどのように労働者に知覚されているのかに着目し、研究を進めている。具体的には、夜勤者のある夜間シフトを再現した模擬的夜勤実験を行い、その間のパフォーマンス変化と参加者の自己評価を多時点で取得することで検証を行っている。 これまでに4件の学会発表および査読付き国際誌に掲載された論文が1報あるが、本年度も引き続いてこれまでに得られたデータの解析及び論文執筆を通した成果発表に取り組んだ。データ解析は、時間経過に着目したメインの解析に加えて、朝型夜型などの個人特性も考慮した解析をさらに進めた。これらの成果をまとめた英語論文を令和5年度中に投稿し、現在査読の結果を待っている状況である。 まとめると、主たる実験を予定してた2年目以降で新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたものの、可能な範囲で模擬的夜勤実験を実施してデータを取得し、夜間労働が労働者のセルフモニタリング成績に与える影響について一定の知見を得ることができた。また、現在査読の結果待ちである論文では、個人特性と夜勤中のセルフモニタリングの変化についても考察することができた。
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