“産後うつ”などの産後の精神的不健康は周産期における重要な健康課題の1つである。産後うつは複数の要因が相互に関係し合い発症し、生活の変化やソーシャルサポートも影響すると明らかになっている。また、これまで精神的健康状態とスマートフォンや携帯電話の長時間利用との間に関連があることが分かっている。産後の母親は乳児の健康管理や頻繁な授乳など育児の面からも外出に制限が生じ、社会的・物理的に隔離された環境となる。それ故に増強した孤独感を補うためにもスマートフォンなどを介したインターネット長時間利用に繋がる可能性が考えられるが、母親のインターネット利用時間に着目した研究は未だ少ない。本研究の目的は、産後および育児中の母親についてインターネットの目的別利用状況を量的に図り、生活習慣や精神的健康状態との関連を明らかにすることである。横断調査を実施し、産後の母親を対象とした実態を明らかにすること、また、詳細な利用状況をふまえた分析をすることで、母親のメンタルヘルスケアに有効な支援を考える一助となると考えられる。 今年度は、調査および解析を実施した。横断調査の結果、生後5~8ヶ月の第1子を持つ母親771名より回答が得られた。解析の結果、従属変数であるエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)得点やアテネ不眠尺度(AIS-J)と独立変数であるインターネット利用時間およびその他の項目等で関連がみられた。例えば、EPDS高得点と使用媒体(モバイルデバイス)ではスマートフォンよりもタブレットやパソコンの使用との関連、また、EPDS低得点と育児アプリ使用との関連など、具体的な保健指導に繋がるような結果も示された。研究成果は学会等で報告しているが、引き続きデータ分析を実施し、更なる検討・成果発表を重ねていく。
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