一酸化炭素(CO)中毒死事例は年間2,000人前後であり、日本の中毒死亡者の半数近くを占める。法医解剖事例においてもCO中毒が死因と見られる事例が散見されるが、その中には血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度(CO-Hb)が致死的高濃度でないにも関わらず、死に至った事例が複数存在する。 本研究では、致死的ではないCO-Hb濃度で死に至る機序の解明を目的とし検討を行った。CO中毒死事例において、各種臓器所見および検査所見に相関のある有効な因子を認めなかったが、1例ミトコンドリアの遺伝子変異が検出された。このことから、ゲノム変異により一酸化炭素がミトコンドリア機能障害を起こしたのではないかと示唆された。
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