研究課題/領域番号 |
19K24200
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古橋 寛子 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40816774)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 漢方 / 生薬 / 多剤併用 / ポリファーマシー / 電子カルテデータ / リアルワールドデータ |
研究実績の概要 |
多剤併用に伴って副作用の増加などの有害影響が発生する「ポリファーマシー」が医療の課題のひとつとなっている。ポリファーマシーについて、西洋薬では研究が進んできているが、漢方薬はその対象となっていないことも多く未解明な部分が多い。そこで、本研究では悉皆性の高いリアルワールドデータである電子カルテデータを用いて、①漢方薬の多剤併用状況と②漢方薬による副作用の発症状況を明らかにすることで、③漢方薬によるポリファーマシーの実用的な定義を提案することを目指している。 このうち、今年度は①漢方薬の多剤併用状況についての研究を主に実施した。対象は2008年~2018年に九州大学病院を受診して漢方薬を処方された全患者とし、その処方データを解析した。 ・漢方薬の被処方者数は経時的に増加し、全受診患者に占める割合も増加傾向であった。このことから漢方薬の処方機会が増えていることが推察され、本研究の意義を再確認できた。 ・漢方薬の処方期間は週・月単位での長期間処方が多かった。特発性腸間膜静脈硬化症のように薬剤の長期服用が発症の要因と考えられているような疾患も存在することから、このような漢方の処方傾向が副作用発症に関連する可能性がある。次年度の副作用発症状況の解析では処方期間についても解析対象とする必要があることがわかった。 ・漢方薬の処方薬剤数は単剤処方がほとんどであったが、漢方薬被処方者のおよそ1/5に多剤併用がみられた。他院での処方や市販薬との重複を考慮すると、実際にはさらに重複は多いものと考えられ、その数は看過できないことがわかった。 これらの結果から、本研究の基礎となる①漢方薬の多剤併用状況を明らかにすることができた。また、得られた成果について国内学会で報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では今年度中に②漢方薬による副作用の発症状況の解析まで開始する予定であったが、電子カルテから抽出した処方データのクリーニングおよび解析項目の選別に想定より時間がかかったため、到達できなかった。 一方で、今年度の解析作業を通して電子カルテデータの二次利用の際の倫理的な扱いや解析方法に習熟できた。また、解析を始めるための準備として、今年度の成果および先行研究をもとに解析対象とする副作用については絞り込むことができた。このため、次年度に入り次第解析を始めることが可能な状態になっており、加えて今年度よりも効率よく解析できる見通しである。以上より十分に遅れを取り戻すことは可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に則り、②漢方薬による副作用の発症状況の解析を実施する。その後、今年度の成果と合わせて③漢方薬によるポリファーマシーの実用的な定義の提案に取り組む。 また、これらの成果について国内学会、海外学会での発表および学術雑誌への論文投稿により報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった物品の一部について、上位モデルが次年度初頭の発売予定と判明したため購入を延期した。これに伴い周辺機器の購入も見合わせたため、今年度の物品費が想定より少なくなった。次年度に上位モデルが発売され次第、これらの物品の購入に使用する予定である。 本年度参加した国内学会は県内開催のものが多かったため、国内旅費は想定より少なくなった。また、国際学会への参加がかなわなかったため、外国旅費は発生しなかった。これらは次年度の学会等参加時の旅費に充てる予定である。
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