研究課題/領域番号 |
19K24201
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山田 裕美子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (90840215)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 安定ヨウ素剤 / 原子力災害 / リスク認知 / ITB |
研究実績の概要 |
鹿児島県薩摩川内市に居住し、乳幼児健診に参加した1.088名の母親を対象に自記式質問紙調査を行った。回収率70.3%であり、欠損値を除外し、520名を解析対象者とした。 本研究では、89.8%の母親が安定ヨウ素剤を子どもに服用させることに不安があり、93.3%の母親が安定ヨウ素剤の適切な服用タイミングを知らなかった。ロジスティック回帰分析を行ったところ、安定ヨウ素剤に関する専門家への相談希望、子どもへ安定ヨウ素剤を正しく服用させる自信、福島産の食材を子どもに食べさせることの懸念が安定ヨウ素剤を子どもに服用させることの不安と独立して関連していた。 原子力災害時に、安定ヨウ素剤服用による最大の効果を得るために、安定ヨウ素剤に関する正しい知識と適切な服用タイミング等についての知識の提供と平時より安定ヨウ素剤服用に関する相談体制の整備が必要であると考えられる。また、「服用に自信がない母親」が多いことから、最適なタイミングでの服用が困難な場合を見据えて、他の防護措置や放射線被ばくの健康影響も含めた平時におけるリスクコミュニケーションの実施が重要であると考えられる。本研究結果は、endocrine journalに掲載済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね予定通り、進行し論文公表まで終えた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、原発立地周辺地域住民の安定ヨウ素剤服用に関する認識を明らかにし、平時や原子力緊急事態時の安定ヨウ素剤服用に関するリスクコミュニケーションの重要性を認識できた。しかしながら、実際に有事の際に実際に対応する自治体は未だ安定ヨウ素剤服用に関する対応準備が万全とは言い難い状況である。なかでも保健師は住民により近い存在であり、実効性のある管理体制や質の高いリスクコミュニケーションスキルが求められる。今後、原発立地周辺地域の保健師を対象とした更なる調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会のWeb開催化に伴い旅費の執行がなくなったため。 次年度に繰り越した経費は、学会参加や旅費、必要となった継続調査の物品購入や旅費に充てる予定。
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