研究実績の概要 |
本研究の動機は、先行研究となる「臨床看護師の倫理的感受性横断調査」において、臨床1年目より2年目看護師の倫理的感受性が低下していたことである。そこで本研究は、その結果を仮説として縦断調査を行うこととした。縦断調査は2018年4月、2019年3月、2020年3月、2021年3月に、同施設の臨床看護師約500名を対象に「臨床看護師の倫理的感受性尺度(角,森;2018)」を用いて実施した。この尺度は3因子全19項目であり【尊厳の意識】【専門職としての責務】【患者への忠誠】で構成されている。評価は5段階で、数値が高いほど倫理的感受性が高いことを示す。2021年3月の調査結果は分析中であるため、2018年に臨床1年目であった18名4年間の経過を報告する。18名のうち4年間で退職者1名、育児休暇2名、無回答があった者が5名いたことから有効回答者は10名、有効回答率は55.6%となった。倫理的感受性の平均値±標準偏差は、臨床1年目(2018年)が3.88±0.40、2年目(2019年)が3.55±0.28、3年目(2020年)が3.68±0.28、4年目(2021年)が3.68±0.32であった。【尊厳の意識】は、1年目3.50±0.69、2年目2.85±0.43、3年目3.10±0.33、4年目2.83±0.73、【専門職としての意識】は、1年目4.01±0.40、2年目3.91±0.30、3年目4.03±0.24、4年目4.06±0.36、【患者への忠誠】は、1年目4.10±0.53、2年目3.83±0.48、3年目3.87±0.50、4年目4.00±0.32であった。全項目で臨床1年目より2年目の方が倫理的感受性は低下し、仮説が検証された。今後は全体の分析結果を反映させた調査報告を行い、臨床1年目の看護倫理教育の重要性について検討し、学会および論文にて発表を行う予定である。
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