本研究は、看護師および看護学生が転倒リスク場面を観察している際の、視覚情報に関連した臨床判断能力を高める教育プログラムを開発し、その有効性を検討することを目的として研究を開始した。看護師および看護学生が視覚情報の何を観察しているかについては、眼球運動測定装置を用いて測定し、観察直後にインタビューを行う方法を計画していたが、新型コロナウイルス流行下において、眼球運動測定は近距離での接触を伴うため、大幅に研究計画を変更した。 計画修正後の研究が目指すところは、看護師および看護学生が適切な転倒予防ケアを行うために必要となる視覚情報に関連した臨床判断能力を高めることとした。臨床判断能力を高めるためには,看護師および看護学生が自己の動作観察能力を省察できることが必要である。 本研究では転倒予防に効果的な動作観察の場面について検討し,高齢者の転倒で多い「立ち上がり時(起居)」「着座」と「歩行時」に絞りこんだ。これらの場面を看護師と看護学生,および理学療法士に観察してもらうことで生活視点での臨床判断能力を評価した。動作を観察する場面を絞り込むことで,看護学生や看護師が経時的に自己省察しやすくなり,臨床判断能力を高めることにつながると考える。また,看護学生と看護師,および理学療法士の動作観察の特徴を比較することは,看護師の臨床判断の特徴を明らかにすることにつながり,患者の動作の見守りを終了する時期の決定や,患者の自立を促進するための指標を作成する上で効果的であると考える。
|