研究実績の概要 |
本研究の目的は、被災地気仙沼市において①意欲低下(アパシー)等心理的要因の実態を調査し、フレイルとの関連を横断的に検討することである。また、②アパシーを呈する人の生活実態やニーズ、対人ネットワークの構造を明らかにし、アパシーからフレイル発症に至る背景を探ることである。 2019年度はまず心理的要因についての実態を把握するため、気仙沼市在住の要介護認定を受けていない65-84歳の男女18,038名のうち、16か所の社会福祉協議会の管轄地域ごとに、それぞれ50%に相当する人数を無作為抽出し(ただし、501名以下の地域は全数)、9,754名を対象に郵送法による質問紙調査を行った。調査では、既往歴や世帯情報等の基本的情報に加え、フレイル(新開ら,2010)や運動・食・社会活動習慣、抑うつ(GDS-5D)や不安(GDS1項目)やアパシー(GDS-3A)、QOL(WHO-5)といった心理状態、性格(TIPI-J)、社会活動のニーズなど、幅広い要因について尋ねた。 この実態調査では、最終的に8,150名(回収率83.6%)から回答を得ることができ、7,845名(有効回答率80.4%)の回答の集計を行った。その結果、フレイルの該当者は、男女で有意差はなかったが、フレイル該当率が高い地域と低い地域では、2倍近くの地域差が見られた。また、抑うつ傾向、アパシー、不安などの心理的要因に該当する者の割合は男女とも4割程度で、他地域のデータと比較しても高い値であった。この結果は、震災から8年経過した現在においても、多くの人々の中に震災による精神的影響が残っている可能性が示唆される結果であった。次年度は、上記のデータについて、心理的要因とフレイルとの関連分析をさらに進めていく。
|