本研究課題は、RSウイルス感染症についての流行状況の把握、早期探知、また、感染伝播性を評価することを目的としている。流行の早期探知としてRSウイルス感染症の実効再生産数のモニター、流行期を判定する報告者数の基準値の作成を実施し学術論文として発表した。RSウイルス感染症流行を予測する数理モデルを作成し、予測結果の検証を行った。また、感染症の伝播性について、新型コロナウイルス感染症の感染者一人当たりが産み出す二次感染者数の分布、及び年齢別感受性を解析し、学術論文として発表した。以下に研究内容の概要を示す。 感染症流行の早期探知・予測:人口規模上位10都道府県における2012~2019年のRSV感染症発生情報を用いて、実効再生産数の情報を基に、流行開始の基準となる報告者数を推定した。さらに、コロナ禍における大阪府のRSV感染症の流行規模を予測した。2020年は流行が認められず、2021年は過去最大規模の流行が認められたが、2023年には大阪府のRSV感染症の流行規模はコロナ禍前程度と予測された。流行の認められなかった2020年は、感染リスクが著しく低下していた。現在、学術論文として発表準備中である。 感染症の伝播性に関する研究:新型コロナウイルス感染症の2次感染者数の分布を祖先株とアルファ株それぞれの流行時期において推定し、時間的変動を確認した。2次感染者数の分布は感染症対策の方針設計に重要な指標であり、そのモニタリングは重要となる。祖先株流行期には、2次感染者数の分布の分散は大きく、(集団感染を起こす)ハイリスク群への対策が有効と考えられていたが、アルファ株の流行時期においては、2次感染者数の分散が小さく、ハイリスク群に焦点を当てた対策の効果が減弱していたことを示唆した。
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