研究課題/領域番号 |
19K24239
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
花房 謙一 目白大学, 保健医療学部, 教授 (70846865)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 肺炎 / クリニカルパス / リハビリテーション / 日常生活動作 / 自宅復帰率 / リハビリテーションプログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,リハビリテーション(以下,リハ)の観点から日常生活動作に着目した肺炎患者のクリニカルパスを作成することである. 2020年度の初頭は,研究協力施設の作業療法士と共に介入研究の調整を試みたが,新型コロナウイルスの蔓延により,多くの施設から研究の協力ができないと連絡があり,介入研究を断念することとなった. 2020年度の秋には,2019年度に調査した市中肺炎患者に対する多施設のリハの取り組みの現状を「市中肺炎患者に対する多施設のリハビリテーションの介入状況」というタイトルで第54回日本作業療法学会(Web開催)に報告した.多施設に対する介入状況の調査は,先行研究が少なく,貴重なデータであると学会参加者から評価をいただいた.また,在院日数が少ない施設ほど自宅復帰率が高いという知見も昨今の回復期リハ病院が増加する中で意外なものであった. 2020年度全体を通して,新型コロナウイルスの終息後すぐに介入研究を実施する準備を行ったが,終息の見込みはなく,2020年度後半は実際の患者に介入するのではなく,リハプログラムを提供する作業療法士へのインタビューによる質的記述的研究へ準備を変更した.質的記述的研究を行う上では,再度研究者が勤務する大学の医学系研究倫理審査委員会に対して,倫理審査の申請を行い,承認を得た.その後,インタビューに必要な機器の準備と質的記述的研究に関する文献と先行研究の検索・精読を2020年度は実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は,初年度に市中肺炎患者のリハビリテーション状況を調査し,次年度は初年度の調査結果から市中肺炎患者の取り組みが優れた施設のリハビリテーションプログラムを参考として,多施設での介入調査を実施し,市中肺炎患者に対する有効なリハビリテーションクリニカルパスの提言を行うことが目標であった.しかし,当初は予想しなかった新型コロナウイルスの流行により,次年度に介入調査を実施することが不可能となった.また,本調査は市中肺炎患者を対象にした研究であるが,起炎菌が新型コロナウイルスの患者が多くなり,研究協力施設側が本研究に協力できないという申し出が増えたことも調査が進まなくなった原因である. 2020年度は,新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのかを観察しながら介入調査の可否を検討していたが,年度の途中から見通しが非常に厳しいと判断したため,実際の患者への介入研究を断念し,市中肺炎患者にリハビリテーションを提供していた療法士側への聞き取り調査が開始できる準備を実施した.しかし,現場の療法士も新型コロナウイルスの対応に苦慮しており,2020年度中は療法士への聞き取り調査も施設によっては困難という返答があり,聞き取り調査を2021年度に延期することが対象者数を確保する上で妥当であると判断した. 以上のように,新型コロナウイルスの流行によって介入調査が実施できなくなったこと,研究協力施設がもともと市中肺炎患者のリハビリテーションを実施していた施設であったために,施設に勤務する療法士も新型コロナウイルスへの対応で聞き取り調査に協力できる余力がなく,療法士を対象にした研究であっても,対象者数が確保できないことが2020年度に研究を進められず,研究が遅れている理由として挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,4月に市中肺炎患者に対するリハビリテーションを提供していた療法士(2019年度の研究協力施設18施設)に対して,再度研究協力依頼を送付し,5~6月で遠隔による聞き取り調査を実施する.7~8月に聞き取り調査で得られた情報から逐語録を作成し,定性的コーディングを開始する.定性的コーディングが進んだ時点で文書セグメントによるデータベース化を行い,さらに縮約を進めてストーリー化を行う.9月以降,調査内容の概念化が進んだ時点で概念モデルを作成し,対象者に再度遠隔にて確認作業を実施する.最終的に得られた概念モデルから,日常生活動作の改善に着目した肺炎患者に対するリハビリテーションクリニカルパスの提言ができるように報告書をまとめる. 報告書は,第56回日本作業療法学会で発表ができるように準備を行い,2019年度の調査結果と2021年度の調査結果をまとめたものは,関連雑誌へ投稿できるように全体のまとめを実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,当初予定していた介入研究が新型コロナウイルスの流行により実施できなかったため,次年度使用額が生じた. 2021年度は,介入研究が不可能であると判断し,対象患者への介入研究ではなく,対象患者を担当していた療法士への遠隔による聞き取り調査(質的記述的研究)へ変更したため,調査に必要な経費を計上した.
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