本研究は、近年増加傾向にある、野生鳥獣由来食肉による食餌性感染症を予防するための具体的な施策を探る目的に、野生鳥獣由来肉の捕獲方法による汚染度の違い、解体方法による汚染度の違いを検討した。また、野生鳥獣由来肉の付着した食餌性感染症に関わる細菌を死滅させる手段として、放射線照射が有効であるかどうかを確認した。 令和元年11月1日から令和2年3月15日までの狩猟期間及び令和2年4月1日から令和2年10月31日までの野生鳥獣学術捕獲許可期間、令和2年11月1日から令和3年3月15日までの狩猟期間において、大分県内および大阪府内でイノシシ15頭、ニホンシカ40頭を捕獲し、「罠捕獲群と銃猟捕獲群」「野外解体群と施設解体群」とで精肉した際の衛生度の違いについて比較検討を行った。「罠捕獲群と銃猟捕獲群」では銃猟捕獲群で有意に汚染度が高かったが、精査したところ、銃猟捕獲群の中でも腹部に着弾したいわゆるボディヒット個体で汚染度が高いことが分かった。「野外解体群と施設解体群」での比較では野外解体群ではすべてのサンプルで汚染が確認され、施設解体群ではすべてのサンプルで汚染が確認されなかった。本結果から、野生鳥獣由来食肉の汚染度に関しては、解体方法によって差が出ることが示唆された。 野生鳥獣由来食肉の汚染状況を改善するための、食品照射実験では10KGyでの照射によって、もともと汚染されたジビエ肉であっても、食餌性感染症に関連する細菌が死滅し衛生状態が保持できることが示唆されたが、コロナ禍の影響によって、明確な判断が出せるサンプル数に至らなかったため、今後の継続的な調査が必要である。 本研究に関しては、第79回日本公衆衛生学会総会において「ジビエ肉の解体方法による汚染度の違いに関する検討」を発表し、ポスター賞をいただいている。
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