研究課題
今年度は、うつ病の予防対策として生活習慣(食事・運動要因等)と精神健康の関連を明らかにすることを目的とし、以下の研究を実施した。昨年度完成させた職域栄養疫学調査のデータベースにて、孤食と抑うつ症状との横断的な関連を分析した。抑うつ症状の評価には、世界的に広く使用されている標準的な質問票(CES-D)を用いた。分析にあたって、抑うつ症状に関連する要因(性別、年齢、事業場、婚姻状況、職位、余暇の身体活動、喫煙、飲酒、残業、勤務形態、睡眠時間、BMI、教育歴、総エネルギー摂取量、葉酸摂取量、ビタミンB6摂取量、 ビタミンB12摂取量、n-3系不飽和脂肪酸摂取量、マグネシウム摂取量、亜鉛摂取量等)の影響をできるだけ取り除いた。その結果、同居者がいる人では、誰かと一緒に食事をする頻度が少ない人は、多い人に比べて抑うつ症状が多いことが明らかになった。本研究結果は「Eating alone and depressive symptoms among the Japanese working population: The Furukawa nutrition and health study」として国際英文雑誌Journal of Psychiatric Researchに掲載された。孤食と抑うつ症状との関連については、高齢者を対象とした研究で報告されているが、労働者を対象とした研究は少ない。本研究は、労働者において孤食と精神健康との関連を検証した数少ない研究の一つである。その他、本職域栄養疫学調査のデータベースにて食事・栄養要因と抑うつ症状との関連を分析し、論文作成を進めている。また2021年の4月に関東地方の企業の従業員を対象として定期健康診断時に食生活、抑うつ症状、運動などに関する自記式調査を実施した。本調査では身体活動・運動について詳細に尋ねており、本調査データにより、今後、生活習慣(食事・運動要因等)と精神健康の関連について詳細な分析が可能となる。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、職域栄養疫学調査を実施し、職域栄養疫学研究のデータベースを構築したこと、また研究により得られたデータの解析及び論文執筆を行い、研究成果が国際英文雑誌に掲載されたことから判断するものである。
今後は、今年度実施した調査データのデータクリーニングを行い、データベースを構築する。研究に伴い得られたデータの解析及び論文執筆を行う。また、得られた知見を国内外の学会にて発表する。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、当初予定していた国際学会等の参加ができなくなったため、次年度使用額が生じた。今年度は研究に伴い得られたデータの解析及び論文執筆を行い、研究成果をオープンアクセス等の国際誌に投稿する予定である。また、得られた知見を国内外の学会にて発表する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Psychiatric Research
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.jpsychires.2020.10.048