研究実績の概要 |
INTERLIPID対象者1,307人(日本人1,107人、日系米人200人)の血清メタボローム解析が英国Imperial College Londonにて実施された。COVID-19の影響により作業は遅れたものの、最終的にはNMR: 112lipoproteins (BI-LISA) + 25 small molecules (BI-QUANT-PS)、およびLC-MS (HPOS): 484 untargeted intensities + 51 annotated intensities (PeakPantheR)のデータが納品された。 本研究においては、男女別、地域別(日本4箇所およびハワイ)に血清リポたんぱく質の階層的クラスター分析を実施したところ、男女差より地域差の方が非類似性は高く、特に地理的に近い方が類似度は高かった。次に、男女別に日本人と日系米人で最も差別化する血清リポたんぱく質因子を解析したところ、男女ともに最小径HDL4の構成因子であった。最小径HDL4は最大径HDL1と反比例の関係にあり、日本人は日系米人よりHDL4濃度が低い傾向にあった。HDL4濃度に最も影響する環境因子を調べたところ、魚由来オメガ3多価不飽和脂肪酸がHDL4濃度と負の相関を示した。HDL粒子径が大きいほど魚由来オメガ3多価不飽和脂肪酸摂取量が多い傾向にあった。HDL1濃度と魚由来オメガ3多価不飽和脂肪酸摂取量の正相関は、HDLコレステロール濃度とそれの正相関よりも大きいものであった。HDL粒子径と魚由来オメガ3多価不飽和脂肪酸摂取量との正の関連性は、年齢、性別、国、BMI、飲酒量、喫煙状況、身体活動、その他栄養素で調整しても消えることはなく、これらの変数による交互作用も認められなかった。今後は、HDL4濃度の臨床的意義についても検討したい。
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