途上国では、採血による血清疫学調査が困難なため、指先の穿刺による血液濾紙法(DBS)による調査が行われているが、コンタミネーションなどの問題があり、DBS検体の遺伝子解析の方法も確立していない。一方で、DBSの中にはコンタミネーションが少ない、長期間の保存に適しており、途上国における血清疫学的調査の利用に優れていると考えられるものが存在する。 本研究の目的は、当研究室がブルキナファソの研究者と共同で行った血清疫学調査で得られたDBS検体を用いて、途上国における肝炎ウイルス感染状況に関する血清疫学調査方法の確立とSequence解析によるfull-genome sequenceの特定の可能性を検討することである。 研究期間を通して、申請時の計画に基づき調査対象の母子240組より得られたDBS480検体より血液成分を抽出し、免疫血清学的測定(CLEIA法)を実施した。測定項目はHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体、HCV抗体を実施した。その後HBsAg陽性検体、HCV抗体陽性検体にHBV・HCVウイルス核酸の検出とその後のSequence解析、系統樹解析(部分配列、full-sequence)を行った。これらの測定により得られた結果と質問票の情報(児の出生場所、性別、ワクチン歴、学歴等)を連結し、母と児それぞれのデータベースを作成し、単変量・多変量解析を用いて母児のHBV感染状況と関連する因子について検討した。また、得られた系統樹をもとに得られた株のgenotype判定、児の感染経路の推定等を行った。最終年度ははここまで得られた知見をもとに既に得られたHCVRNAの各領域のNested PCR及びFull-Sequence解析を試行した。また、本研究で得られた結果に基づき2021年より同国での新たに実施されている血清疫学調査の考案・実行に参画した。
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