生活習慣病発症のリスクである慢性炎症状態と出生情報や食事、ストレスとの関わりを明らかにすることは、その後の健康維持のために重要な知見となる。本研究では、コホート研究に参加している日本人中高年を対象に、胎児期環境および成人後の食事・ストレス状況の慢性炎症状態への相互作用を疫学的アプローチにより解明することを目的としている。 令和2年度は、コロナ禍で予定より遅れたものの、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)徳島地区調査参加者を対象とした追跡調査を終了することができた。 慢性炎症はメタボリック症候群の発症に関連していると報告されている。朝食摂取および睡眠時間とメタボリック症候群との関連について追加解析を行った。食事全体の質スコア(栄養パターン)を算出し、解析結果を修飾するか検討を行ったところ、男性において朝食欠食とメタボリック症候群との正の関連は、健康的な栄養パターンを調整すると減弱した。睡眠時間の結果には影響はなかった。このことから、朝食欠食とメタボリック症候群の正の関連は一部、食事の質を介していることが示唆された。本結果は第31回日本疫学会学術総会にて発表し、論文を投稿中である。 また、慢性炎症の指標である血清hs-CRP値をアウトカムとし、胎児期環境の指標である出生体重と食要因との交互作用を検討した。結果、低出生体重群で総エネルギー摂取量が多いとCRP値が高いという交互作用が有意であった。このことから、低出生体重で産まれると総エネルギー摂取量の多さと相互作用して慢性炎症状態を引き起こしやすい可能性が考えられた。
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